岡山市立中央図書館へ行ってきた。〜岡山図書館旅行その1

 機会があって、岡山の図書館を見てきた。一つめは、岡山市立中央図書館*1
 以下は2016年8月、いち利用者としてのレポート。

  • アクセス・周辺環境

 最寄り駅のJR岡山駅から路面電車に乗り、清輝橋(せいきばし)で下車。近くの交番で道を尋ねたところ、市立中央図書館だと言っているのに「県立図書館?」と聞き返されたのがちょっとおかしかった。地元の人はわざわざ道を尋ねないし、道を知らないようなよそ者は県立図書館の方に行くという認識なのだろう。
 住宅街の中を流れる西川沿いに南下して10分少し歩くと、図書館の裏側に出た。裏側は車庫になっていて、立派な移動図書館車がちょうどフタを開けて本を露わにした状態で停まっていた。これを右手に見ながら建物の北側に回り込むと駐車場。なかなか広い。
さらにぐるりと回ると、同じ敷地内に明治風のしゃれた建物がある。八角園舎*2といい、現在は幼児向けの施設らしい。
 南側が図書館の正面。前庭は植え込みや石のオブジェなどがあり、ちょっとした広場のようになっている。建物は2階建て。断面でいうと、四角形に半円を接着したような形になっている。半円の突き出た側が南側になる。

  • 入口

 建物に足を踏み入れた第一印象は「広い」。
 入って左側が児童コーナー、右側が一般コーナー。角にカウンターがある。カウンターの前あたりに広めのスペースがあり、ブックトラックや机等で展示がされている。このあたりの上が一部分吹き抜けになっていて、天井から明るい光が降りてくる。広いと感じたのはこのスペースのためだ。閲覧室の案内図は修正されているから、もともとは別のものが置いてあったのかもしれない。

  • 一般コーナー(1F)
    • 全体

 書架は木製。足元のカーペットは、なんというか表現のしがたい色だ。壁際や書架の際は黄緑っぽく見え、真ん中あたりは赤っぽく見える。さきに紹介した図書館のホームページの写真だと赤にしか見えないが、実際歩くと印象が異なるので、毛足とか素材の関係だろうか。ソファは深い青色や青緑。

    • 展示、レイアウト

 カウンター前の展示は何種類かあった。地元らしく「岡山の本」という展示もある。
 目立っていたのが「ベストセラーを読もう!」とポップの出た平机。村上春樹湊かなえ宮部みゆき有川浩など、ベストセラー作家の、それも2010年あたりのちょっと古めの単行本が平積みになっている。穿った見方をすれば流行った頃にたくさん買ってだぶついているのかも知れないが、人気作家でも10年近く前の本なら、かえって宣伝になっているという見方もできそうだ。
 また、雑誌コーナー寄りには「子育て支援コーナー」というのがあった。案内図にも出ているから、これは展示というより常設なのだろう。育児関係の資料が並んでいる*3

 展示の後ろにOPAC端末10台が固めて置いてある。その周りにマンガ、DVDやCD、道路地図など特殊な資料がそれぞれコーナーになっている。マンガコーナーは定番の愛蔵版マンガが中心で、図書館っぽい品揃え。
 道路地図の横に面白いものを発見。引き出しのたくさんついた書類整理キャビネで、中には48都道府県の観光パンフレットが入っている。都道府県の作ったものだと、ガイド本と違って情報が絞り込まれているので、かえってざっと見たい時には便利そうだ。それにしてもどうやって集めているのだろう。

 奥の方に、PC関係の図書コーナーがある。壁面の書架にはWord、Excelなどの本。最新の2016から、古い版まで色々ある。手前の机には、iPhoneFacebookiPadなどの本が平置きで展示されている。図書館のPC図書コーナーは古いとよく言われるが、実際のところ古いバージョンを使い続けている人というのは案外多い。全体として、PCに精通した人というより、苦手だが使いたいので調べようという人向けの雰囲気を感じる。詳しくないユーザ向けと考えると、文字だけの背表紙よりも、表紙を見せる展示の方が効果的そうだ。
 PCコーナーの隣は大活字本コーナー。

    • 書架

 部屋全体の書架は、壁面と、高い方の書架が7段で200センチ程度。低い方の書架は150センチ程度で4段、文庫本の棚は6段に区切っている。ただし文庫だけ別置なのは読み物類だけで、新書は普通の本と一緒に置いてある。低書架、高書架とも、下2段が少し斜めになっているタイプ。
 スペースが足りないのだろう、ほとんど低書架の天板の上には資料が1段分並んでいる。従って実際は5段として使われている。しかし本の上に横積みになっているようなのは見なかった。きちんと手入れされている。
 書架の間はかなり広い。書架の横に小さい机があり、配布用の案内図が置いてある。カウンターで案内図を手にしてから書架の前へ進む人だけでなく、とりあえず飛び込んでから探すという人は多いだろうから、これはありがたい。

    • 座席、その他

 書架の近辺に椅子はほとんどない。部屋の真ん中あたりに大机と椅子が2組、壁際にソファが3つほど。
 図書館の入口を入ってすぐ右側に新聞・雑誌コーナーがある。ここには壁際に寄せて深い青のソファがたくさんある。館内でゆっくり読みたい人はここまで持ってくるのだろう。壁際といってもガラス窓なので光が入り、明るい。
 書架の間でしばしばスタッフに出くわす。スタッフは空色をベースにしたお揃いのエプロンを着けている。ローソンとか佐川急便のユニフォームの色に似ている。図書館名が刺繍されているところを見ると支給品だろうか。
 1Fのトイレは和式2、洋式1。おむつかえは、男女とも多目的トイレを使う方式のようだ。

  • 児童コーナー(1F)
    • 全体

 図書館の入口から左側、南に向かって突き出た半円の部分が児童コーナーになっている。半円はガラス張りで明るい。外周が円形なので、そちら側に面した書架は放射状になっており、若干ランダムな並びにも見える。しかし、こちらも書架の間の通路が広めにとってあり、狭苦しい感じはしない。こちらでは書架の上にもう1段並べる使い方はしていない。絵本などが面陳されている。
 書架の並べ方は、読み物系とそれ以外を分けている。読み物以外は、NDCで並ぶ。天井から「スポーツ」「こうさく」「くらし」などのサインが吊るしてある。
 児童コーナーによくあるじゅうたんスペースがない。代わりに、子どもサイズのソファやベンチが割と多く置かれている。ソファは、色々な形のものがある。柱を囲む形で設置されたソファ、高さが低くて面積の広い円柱型ソファ。後者の上では子どもが這っていて、じゅうたんスペースと同じような感覚だ。
 書架の横にも座席がある。スツール、一人掛けソファ、椅子など種類は色々。後から増やしたのかもしれない。

    • 絵本コーナー

 カウンターに一番近いところに絵本コーナーがある。
 側の低い台の上に、紙芝居の枠が据え付けになっていたのが面白かった。見ていると、子ども連れの親が紙芝居を読んであげたり、子ども同士で紙芝居を読みあったりしている。また、親と一緒に座れるような割と大きめのソファがある。青緑色で、図書館というより家庭にあるようなひじかけ付きの形。上にはぬいぐるみがいくつか。お行儀よく並んでいるのでなくとっ散らかされて置いてあるあたり、飾りではなく「ホスト」役なのだろうと思われる。
 絵本コーナーのすぐ横に子ども用トイレがあった。この配置は工夫されているなぁ、と思った。ぎりぎりまでトイレを我慢して絵本を読む子どもがすぐ駆け込めるし、カウンターから割と目の届きやすい範囲で、かつ一般コーナーから見ると距離があるので、不審者対策にもなる。

  • 2F
    • 全体

 階段を上がり、2Fへ向かう。足元を見ると、例の表現しがたい色のカーペットが、階段から2階にかけては緑っぽさが強くなっているのに気づく。階段から1Fを見下ろしてみると、歩いていた時以上に赤みが強く見える。読書を楽しむことがメインの1Fは華やかな暖色、静かに調べものをする2Fは穏やかな寒色で、フロアの機能の違いを色合いで表しているのかもしれない。ゾーニングのうまい方法だ。
 階段を上がった右側は、ホールや展示スペースらしい。手前に休憩スペースらしいソファがあり、1Fに通じる吹き抜けスペースのぐるりには、壁に作り付けのガラスケースがある。自分が行った時にはなにもやっていなかったので、閑散としていた*4
 階段のおおむね正面にカウンターがある。左側には郷土資料コーナーと参考資料コーナー。階段近辺には検索用端末がまとまって設置されていたり、電話帳、特別展示コーナーなどがある。そういえば1Fになかった目録カードボックスが、こちらには鎮座していた。郷土資料だとまだOPACで引けないものがあるのかもしれない。特別展示コーナーは、坪田譲治展示コーナー*5。ゆかりの資料やモノなどが置いてある。

  本のある方へ進む。カウンターのすぐ左に、縁側つきの畳の空間がある。閲覧室に向かって縁側があり、壁際に床の間や違い棚がある。古い木造住宅の壁をとっぱらった感じだ。館内案内図によると「岡山の部屋」というらしい。坪田譲治愛用と掲示のある文机や、屏風、由緒ありげな什器などがある。一方で段ボール箱など、よく分からないモノも置いてある。部屋自体は図書館ができた時からあるのだろうが、催し物などの時だけ使うのかもしれない。

    • 郷土資料コーナー

 図書館の他の箇所に比べて、やや薄暗い。実際照明が暗いのか、外光が入りにくい空間にあるためなのか分からない。参考資料コーナーとの間は書架で区切られていて、カウンターの前を通らないと出入りできない。貴重なものも多いからだろう。古い資料が多いので古書らしい匂いがして、古書店っぽい雰囲気。
 メモを細かくとっていなかったので記憶がはっきりしないが、なかなか色々なものがあって面白かった。また、こちらには椅子が見当たらなかったように思う。
 壁面に、鍵のかかるガラスケースの書架がある。燕々文庫というそうだ。帙入りの和本や、巻子本も少しある。特別文庫の案内*6を見ると、他にも貴重書があるようだ。

    • 参考図書コーナー

 こちらは児童コーナーの上にあたり、外に面した壁がガラスドームになっている。外光が入って明るい。書架は1Fと同じく4段だが、入っているものが辞書・参考図書類ばかりのためか、なんとなく見た目が重そうだ。通路は1Fと同様に広い。書架脇に、立ったまま資料を広げられるテーブルがある。
 閲覧席は主に壁際にあり、そのほかに書架の横に一人掛けの椅子がいくつかある。一人がけの机つき座席が6つ×4つの島になっていて、24席。また6人がけのテーブルが2、4人がけのテーブルが3。カウンター前あたりには、数名がけのテーブルがいくつかあった。
 一人がけの椅子は青緑のビロードのような布地で、座面に比べると背もたれが少し長い不思議なデザイン。特別に発注したものかもしれない。

 岡山市立中央図書館のレポートは以上。続きはまた気が向いたら。

*1:図書館の基本情報はこちら。岡山市立中央図書館のご案内

*2:詳細はこちら。八角園舎|岡山市|施設案内

*3:ところで図書館のせいではないが、育児関係の本というのはピンクやパステル系の装丁がやたら多かったり「ママの〜」を強調したタイトルのものが多くて、それだけ集めると「男子禁制」感が漂ってしまうのはどうにかならないだろうか。

*4:自分の訪問する少し前の時期まで、こういうのをやっていた。|カレントアウェアネス-R 2016年7月25日「岡山市立中央図書館で、「岡山市立図書館設立100周年記念 戦災前に疎開できた岡山市立図書館の蔵書・再現」展を開催中:蔵書印や目録を手掛かりとした調査の成果」本当はこれに合わせて行きたかったのだが…。

*5:岡山市立図書館ホームページ|坪田譲治(岡山人物往来)

*6:特別文庫(貴重資料)|岡山市