海老名市立中央図書館へ行ってきた。

 今年の7月、機会があって神奈川県の海老名市立中央図書館に行ってきた。メモだけ作ってぐずぐずしているうちに、当の図書館が休館になってしまった*1。というわけで、なんと年の瀬の今頃に夏の出来事をアップ。以下は2014年7月某日、いち利用者としての訪問レポート。記憶違いがあればご容赦。

  • 周辺環境

 小田急海老名駅から歩く。駅の周りには工場か倉庫のような建物が多い。JRの線路工事中とかで、舗装していない駐車場が広がる。少し見渡せば大きなマンションなども見えるが、駅からの道の両側にあるのは駐車場や大きな倉庫だけ。夜はかなり暗いだろうと思う。
 道路を通り抜けると、唐突に大きな建物が寄り集まっている場所に出る。煉瓦づくりの文化ホールや商工会議所があり、図書館はその隣。レンガ風の真珠色タイルとガラス。近寄ると、軒先にロープが張られ「落下物があり危険なので近寄らないで」と書いてある。建物自体は割合綺麗で、一見して今にも何か落ちてきそうな様子ではない。が、東日本大震災の時に壊れでもしたのだろうか。
 図書館は昭和59年にできたらしい。打ちっ放しのコンクリート、ガラス、金属を中心とした建築は、一時流行った感じのデザイン。そこそこ歴史がある割には什器や内装はずいぶん綺麗なので、何度かリニューアルしているのかもしれない。

  • 全体

 玄関を入ると二重扉で、風防室にはベンチがいくつか。ここでは飲み物を飲んでもいいらしい。
 入口付近に「お客様の声」のような投書掲示コーナー。読んでみると、駐輪場の広さについての要望などのほかに、「書庫ツアーが良かった」「スタッフの対応が良い」とか、褒めている内容のものが半分くらいあった。一般的にお店や公的施設への投書は、満足している人はわざわざ書かないから、クレームの方が多いのが普通なので珍しく思った。入口で褒める投書が目に入るのは、無関係なユーザにとっても気持ちいい。ただ、これがもし酷い内容の投書だったら同じ場所に掲示してあるのは不快かもしれないと思う。
 閲覧室入口をくぐると、広々とした空間。1Fが児童書と一般書、2Fが一般閲覧室とレファレンス室という構造だ。2Fの方が1Fより床面積が少なく、半分くらい吹き抜けになっている。さらに2Fの一般閲覧室の天井に巨大な天窓があるため、1Fから見上げると2階分が突き抜けて見える。書架は壁面と室内とにある。室内の方は児童書コーナーが150センチくらい、一般書コーナーが170センチくらいで統一されている。書架と天井の間に空間が確保されているので、非常に開放感がある。

  • 児童書コーナー

 閲覧室の入り口を入って左側手前が児童書コーナー。子ども用のいすと机が12席ほど、幼児用に低く囲われたじゅうたんスペースもある。
 2014年4月にコーナーが一部移動したという掲示がされている。変更点はおもに3点。1つめはティーンズコーナーを、児童書コーナーから奥のCDコーナーと一般書書架の間へ移動。2つめは生活・手芸・料理本コーナーを、一般書のNDC5門の場所から児童書コーナーへ移動。3つめは外国語絵本コーナーを、入り口付近の赤ちゃん絵本などの場所から、児童書コーナーの児童書研究書の横に移動。
 2014年4月というと、海老名市立図書館がTRCとCCCの指定管理による運営に切り替わった時だ*2。つまり現指定管理者の意図による配置変更ということになる。生活・手芸・料理本コーナーを児童書コーナーに置くのは、子ども連れの保護者(おそらく主婦層)に手にとってもらうためと思われる。ティーンズは子どもの延長かそれとも別なのか、外国語絵本は絵本なのか児童書研究の素材なのか。それぞれどういう層を想定しているか。色々と思想が読みとれて面白い。

  • 一般書コーナーなど

 閲覧室入口を入って右側がカウンター、その奥に一般書。壁際がぎっしり書架になっていて、文庫以外の小説類はここに並ぶ。それ以外の本はNDC順に、5列に並んだ書架に入っている。5列の一番奥が、4月に移動したというティーンズコーナーになっている。これは分量はそれほど多くない。
 さらに奥のつきあたりにはCDコーナー。品揃えはクラシック、落語、古めのポップスなど。視聴ブースが4つほどある。自分が見た時には、ブースに座って読書している人がいた。そう言えば一般書コーナーには椅子があまり多くない。雑誌コーナーや2Fの閲覧室に持っていって読む想定なのだろう。
 奥の左側は雑誌コーナー。上が吹き抜けで、壁は1-2階分の高さまでガラス張り。直射日光ではなかろうが、さんさんと明るい。大きいテーブルに複数が掛けるタイプの座席がなく、すべて一人掛けのソファ。書架の横に一人掛けのスツール。あるいは書架の横に作り付けの一人用デスクがあり、そこで机に向かって読むこともできる。バックナンバーは地下書庫にあるらしい。
 書架はよく整っている感じ。そこそこ新しい本が、隙間なく入っている。本を戻しているスタッフにもよく出くわす。スタッフはTRCの黒いベスト姿。
 部屋の真ん中あたりに、2Fに続くらせん階段がある。階段の壁は打ちっぱなしのコンクリで、階段はわりあい急。エレベータは別途あるようだ。

  • 2F:一般閲覧室

 階段を上ると、右が一般閲覧室、左がレファレンス室に分かれている。一般閲覧室には一人掛けの勉強机といすが50席ほどで、資料はまったく置かれていない。満席に近い盛況だった。一般閲覧室のぐるりは、壁がわりのようにガラスの展示ケースが置かれている。展示ケースごしに1階が見下ろせるという構造。自分が行った時は、ちょうど「怪談絵本」*3原画の展示をやっていた。
 一般閲覧室から廊下を挟んで、事務室と、PC・電卓利用可能室がある。PCや電卓はキータッチ音で苦情になることがあるので、別室としているのだろう。どちらの部屋も廊下沿いにはめ殺しの大きなガラス窓がある。部屋の向こう側の壁にはこれまた大きなガラス窓があり、廊下から素通しに外の景色まで見渡せる。お陰で、直接外に接していない場所にも関わらず解放感がある。
 ただPC利用室はともかく、事務室が丸見えというのは珍しい。事務用デスクや、その上のPCまでよく見える。見られるからか、事務室は机上まで綺麗に片づいている上、スタッフも見当たらない。ちょうど昼時だったが、お昼はどこで食べるのだろうと余計な心配をしたくなる。個人情報を扱う作業など見られて困る類の事務仕事や、クレーム対応などのためには、他の場所があるのだろうか。
 廊下を奥へ行くと、ホールのような場所があるらしい。ここは入らなかった。

  • 2F:レファレンス室

 レファレンス室にはかばんが持ち込めない。横のコインロッカーに預けて入る。入り口にカウンターがあり、スタッフが一人いる。
 たいてい参考図書室は薄暗いものだが、ここは1階と同様に書架の高さが統一されている。また両側の壁がガラスになっていて、外に面した側は曇りガラスにブラインド、室内に面した側は透明ガラスで、明るく見える。席は机といすの一人掛けセットが12席、丸机にいすのセットが4-5人分。
 新聞のバックナンバー、地図、電話帳、いわゆる参考図書、そして郷土資料がこの部屋のメインらしい*4。郷土資料は海老名市だけでなく、神奈川の歴史や近隣の市の歴史もカバーしているらしい。パンフレットの類をファイリングしたものもある。部屋の一番奥には「市川文庫」と書いた棚。入っているのは文学全集、群書類従、JISハンドブックなど。統一性のないところを見ると、誰かの蔵書をそのままもらったとかテーマで集めた文庫というのではなく、寄付された予算で買った本といったところだろうかと推測。
 壁際の書架の、天井との境目のところにブルーシートや布が敷かれてあった。また、よく見ると壁の他の部分にも。ちょうど自分が訪問する数日前に大雨が降ったから、雨漏りでもしたのかもしれない。

 全体の感想。
 建物はなかなか斬新な造り。ただ「落下物注意」やブルーシートの件など経年劣化を感じる部分はあった。現在の改装工事で、そういった部分も手当てされるのなら喜ばしいことだ。
 今回時間がなくてあまり近隣を歩けなかったが、近隣は畑や郊外型の広い駐車場を持つ店舗ばかりで、飲食店はあまりなかった。ちょっと飲み物を買うのに結構歩き回った。カフェができたら流行るかもしれない。ただ道路の交通量がそこそこ多かったのと、夜は周辺が暗そうだから、徒歩や自転車で来て遅くまで居るのはちょっと心配な気もする。もっとも駅周辺自体が現在再開発中らしい*5から、2015年中にはずいぶん風景が変わるのだろう。どんな場所になっていくのだろうか。

*1:「海老名市立中央図書館は、12月1日(月)から来年9月30日(水)まで、改修工事のため長期休館いたします。」図書館ホームページのお知らせより。

*2:TRC図書館流通センターホームページ|海老名市立図書館の運営について

*3:岩崎書店「怪談絵本」。ちなみにこのシリーズは本気で怖い…。

*4:ちなみに、後で手元にあった『別冊宝島EX 図書館をしゃぶりつくせ!』1993を見たところ、「海老名市立中央図書館の参考資料室には世界の言語辞典が集められている」と紹介されていた。よく見ればその方面が充実していたのかもしれないが、気付かなかった。不覚。

*5:海老名駅周辺が改造中、2015年には駅前に「ららぽーと」が誕生