2016年に、みききし、おもったことども。

 年の初めに、ざっくり振り返る。

  • ブログ状況

 更新回数は17回。うち13回がイベントレポート。

  • 読んだもの

 「謎の独立国家ソマリランド*1」の著者と、室町時代の研究者との対談。アフリカの部族社会を日本の中世武家社会に例える比喩は「謎の〜」でも登場していたが、その時はやや違和感があった。しかし、実際に専門家同士がフラットに交わすおしゃべりは刺激的かつ愉快。研究書ではないが、新たな視点を発見するための知的飲み屋トークとして楽しんだ。山口晃さんの表紙デザインも素敵。

    • 一万年の進化爆発

一万年の進化爆発 文明が進化を加速した

一万年の進化爆発 文明が進化を加速した

 「銃・病原菌・鉄*2」への批判本らしいが、前者を読んで面白かった人はこの本も楽しめそうな不思議な批判本。アシュケナージユダヤ人が歴史的・宗教的理由で強い淘汰圧にさらされた結果、遺伝的に知能指数が高い代わりに特定の遺伝病が多く発生する進化を遂げたという話が興味深かった。長所と短所はセットと考えると、現在ただのマイナスと見えているような遺伝的特徴も、もしかすると別の環境においてすごく貴重な可能性を秘めていることもあるのかもしれない。

    • 情報覇権と帝国日本

情報覇権と帝国日本I: 海底ケーブルと通信社の誕生

情報覇権と帝国日本I: 海底ケーブルと通信社の誕生

情報覇権と帝国日本II: 通信技術の拡大と宣伝戦

情報覇権と帝国日本II: 通信技術の拡大と宣伝戦

 明治初期に外国の会社と電信の独占契約を結んでしまった日本が、その後自前の技術や資本や国際社会での発言力を蓄積していく中で、どのように主導権を取り戻そうとしたか。分厚くそして緻密な本なのでいちいちの情報はあまり覚えていないが(あかんやん)、そのときどきの政治的状況、各プレーヤーの思惑、契約上の細かな駆け引きなど、情報流通を巡る裏事情が面白い。今でいうと電子ジャーナルや検索エンジン著作権等をめぐる国際的な駆け引きみたいなものか。…で、いまリンク張ろうとして気づいたのだが、2016年に第3巻が出てるらしい。わーい。

    • 書物の日米関係

書物の日米関係―リテラシー史に向けて

書物の日米関係―リテラシー史に向けて

 現在アメリカの大学等に所蔵されている日本語図書のコレクションが、なぜそこにあるのか?誰がどうやって集めたのか?を追った本。日本への理解を深めてもらうために構築されたコレクションが、日米関係が悪化すると敵国としての日本を研究する目的で活用され、その研究がまた戦争の終わった後には、少数ながら心から日本文化を愛する人を育てる苗床として機能する。「日本研究」の一筋縄でいかなさ。

    • 消されたマンガ

定本 消されたマンガ

定本 消されたマンガ

 著作権問題、差別表現、残酷表現などで、単行本では改変されていたり、単行本に収録されなかった作品の事例紹介。作者自身の意思で本にされなかった作品に至っては、雑誌のバックナンバーを所蔵している図書館くらいでしかアクセスできず、合法的に世に広める手段はほとんど無い。
 そういえば2016年には「こち亀」が「少年ジャンプ」での最終話掲載を迎えて話題になったが、同じ号に載った1976年の第1話は、台詞などで問題になりそうな箇所が一部変えられていたという。読みながらその話を思い出した。

    • 国宝消滅

国宝消滅

国宝消滅

 文化財を経済の世界で「現役」にし、生きて動いている状態にすべしということを主張した本。文化財を稼げる観光資源とし、しかも大事に祀り上げておくのでなく日常的なメンテナンスを行い、それによって伝統技術の需要を増やし、若手を育成する。やり方については感情的に反発を感じる部分も無いではないが、少なくとも方向としては、この方向しかないのだろうなと思う。

  • イベントなど

 図書館大会も総合展も行かなかった。聞きに行ったイベント等は、たいがい記録にしている。

 ズボラな自分にしては比較的きちんとレポートを上げられた。理由を考えてみると、このレポートはあの人の役に立ちそうだとか、この情報はいつ使う予定だから整理しておかねばとか、知人に尻叩かれたとか、だいたい外在的理由。

  • 懺悔

 2016年にみききしたことで、結局年が変わるまでブログに書けなかったもの。理由は100%自分の怠け癖。

    • 加東市中央図書館*3へ行ってきた。
      • 貸出密度を調べてみた。」で調べた加東市の図書館。貸出数の多い理由は何だろう?と足を運んでみた。実際雰囲気の良い素敵な場所だった。あとは駅からの遠さにたまげた。図書館のホームページに駅からの行き方が書いていなかったので嫌な予感がしたのだが、最寄り駅から徒歩40分以上。しかも暑い季節だったこともあり歩道はほとんど人影がなかった。道路は広くて車の交通量は多く、移動手段のメインは車なのだろうと実感。あのあたりの地域で広域利用可能にすることのメリットを身に染みて理解した。
    • 映画「海すずめ*4」を見てきた。
      • 図書館が舞台の映画。市立図書館自転車課の若き図書館員の活躍を描く。宇和島の綺麗な風景と、爽やかな青春物語が楽しい映画だった。2016年は図書館の歴史関係の話を聞きに行く機会が多かったこともあり、戦前の私設図書館の歴史にまつわる資料を探すという設定にもわくわく。ただネタバレになるので詳しく書けないが、「資料」でなく「史料」と呼ぶべきものを扱うのに「あちゃー…」という扱いが結構あって、野暮と知りつつ、見ながら身悶えしていた。
    • 岡山図書館ツアー
      • その1(岡山市中央図書館)だけ書いて放置しているが、この時には都合4つの図書館を回った。暑さのあまりボーッとなって、1館分だけ書いたところで力尽きた。きっかけがあればまた書くかも(未練)。
    • JALプロジェクト2016
      • よそのブログで詳しい記録*5が書かれていたので、単なるレポートはまあいいか、と思った。聞きながら思ったことは、年をまたいででも何かしらまとめねばと思う。
  • 総合的振り返り

 2015年はいろいろと変化があり、ついていくだけで精一杯だった。2016年にはいくらか慣れてきたことで、むしろ自分の力不足を具体的に思い知らされる場面が多かった。
 知識やスキルの不足は今に始まったことでもないが、いつの間にかゲームのステージはひとつ上がっている。知識やスキル自体ではなく、それらを裏付けにしつつ他のプレーヤーに情報を共有し、納得させて協力を得るといった高度な力が必要な感じ。プレゼンひとつでも、大事なのは話それ自体より、話す中身を支える圧倒的な知識とか、さらにそれを支える信念の方なのだと気づく。まったくもって今更だけれども。
 そういうものは付け焼刃できるものではないので、インプットとアウトプットを繰り返す中で筋トレみたいに少しずつ蓄積するしかない。読書が若干歴史寄りになったのも、ブログ更新というアウトプットが若干増えたのも、そういう足掻きの一環ではある。単発の知識でどうにかならない、腹の底から出てくる考えを養うには、歴史を知らねばならない。

 2017年の抱負は、結局上記の振り返りの延長線。学ぶということに、改めて本気で向き合う必要がある。…とは言え、続かなくては意味がない。ゆるゆる、ぐだぐだ、ぼちぼちと、今年もよろしくお願いします。