大阪府立国際児童文学館に行ってきた〜バックヤードツアー篇

 前回の続き。
 午後3時からバックヤードツアー開催。当日参加可能ということで勇んでカウンター前に集合する。集まったのは10名ほどか。職員さんの案内でカウンター横の通路から書庫の中へ。ダンジョンへ入る心境。

  • 地下4層(貴重書、外国資料)

 降りてきたところで、まず大阪府立国際児童文学館の由来と運営についての概要を伺う。

 (なお自分は周りが物珍しくてきょろきょろしてたので、概要に限らず説明の方はわりとうろ覚え。以下はうろ覚えのことを書く。ちゃんと知りたい人は自分でHPでも見てください。)

 児童文学館は地上2層、地下書庫4層。児童文学者の鳥越信さんから12万点の資料を寄贈を受けたのが始まり。寄贈の条件は継続的に資料を収集すること、広く公開すること、児童文学についての情報発信をすること。財団法人大阪国際児童文学館が運営している。児童文学者の専門員と、6名のスタッフがいる。スタッフは財団の職員で、府の職員ではない。開館から25年、現在は70万点の資料を抱える資料センターであり、児童書の普及・振興を進める研究センターでもある。
 資料センターとして、明治以降の児童書を網羅的に収集。この網羅的というのがポイントで、児童書であれば内容に関わらずすべて収集している。ちなみになぜ明治以降かというと、「児童書」という概念ができたのがそのへんだから。
 さて貴重書庫へ入れてもらう。温度17〜18℃、湿度40%でひんやりしている。棚には一冊一冊透明のビニールカバーを掛けられた資料が整然と*1並んでいる。すべて児童書なのでNDC分類が使えない。図書は出版年月日順、雑誌は出版社のアルファベット順に並べてある。
 職員さんが見せてくれたのは昭和の「少女倶楽部」。口絵はきれいなカラーで、華やかな振り袖姿の女の子。それが同じ昭和でも16年頃(?)刊行のものになると、国民服の女の子が戦闘機の前でポーズとってる絵やら、日の丸振ってる絵になる。第一、雑誌の厚みが半分くらいに減っている。時代の流れがはっきり分かる。子どもの本は時代を映す鏡で、大人が子どもをどう育てようとしたかが明らかに現れる、とのお話。
 ここの方針は、資料が作られた時の姿を極力残すことなのだそうだ。ビニールカバーは掛けてあるが、資料に貼り付けてはいないのですぐ外せる。箱も帯も、「投げ込み*2」もそのまま。明治44年以降に刊行された手のひらサイズの本箱セット35冊入りに至っては、木製の本箱ごと保管されていた。これはすごい。しかし保存が大変そうだ。

 貴重書庫を出る。同じ階には外国の児童書が、固定書架に置かれている。外国のものはさすがに網羅的収集するわけにもいかないので、重要そうなものを重点的に買ったり、寄贈してもらったりしている。職員が整理できるものはするが、マイナーな言語でスタッフの手に負えないものは専門の非常勤調査員に頼むという。聞けなかったが、どういうつてで非常勤調査員さんを探してきてるんだろうと気になる。マイナー言語ができて資料整理ができる人材って、めちゃめちゃ限られてますやん。

 まずは紙芝居。平たいボール紙みたいな箱に入れて、寝かせた状態で重ねてある。現物そのまま保存という方針に則って、実際演じる際に使う枠つきの箱も保存してある。台が割と高くて、横には引出がついている。ここにお菓子を入れていたのだそう。紙芝居の絵は劇画調でけっこう怖い。10枚くらいで1回分、普通は50回60回の続き物だったそうだ。大阪の三邑会という紙芝居屋さんの団体?組合?があり、そこから寄贈してもらった。この団体は今でも活動を続けていて、時々児童文学館に来て演じてもらったりもする。
 マンガ、マンガ雑誌もずらりと並んでいる。職員さんの説明によると、マンガやマンガ雑誌を網羅的に集めている機関は少ない。国会図書館でも集めているが、雑誌は合冊製本してしまうので失われる書誌情報があるとか、利用者が多いので資料の傷みが激しいといった問題がある。ここでは製本せず、そのままで残している。幸い利用者もマナーを守ってくれているそうだ。実際マンガもマンガ雑誌も、とてもきれいな状態で保存されている。
 ツアー客の女性がマンガ雑誌の裏表紙をちらっと見るなり、「あ、『日ペンの美子ちゃん』だ!」と興奮していた。製本せず、裏表紙の広告が見えるようになっていればこそ。現物保存主義の強さをかいま見る。
 現物保存といえば、雑誌の付録の冊子も保存されている。昔のマンガ雑誌は付録で人気を集めようとした時期があった。甚だしきは5、6冊も付録が付いていたり、同じ作品の連載が本誌と付録に代わる代わる掲載されているようなこともあるという。

  • 地下2層(マンガ以外の雑誌)

 こちらは子ども向け雑誌がずらり。面白いのは、普通の雑誌でも児童文学関連の記事が載っている号は買っていること。最近は普通の婦人雑誌でもいきなり絵本の特集を組んだりするから油断できない、というお話。ここらへんでちょっと時間がなくなってきたので急ぎ足。

  • 地下1層(1956年以降の単行本)

 児童書は年に4000〜5000冊くらい刊行される。最新の一年分は開架に置いておいて、3ヶ月経つと古いものから書庫に入れる。入った新刊は、常勤職員6名で分野ごとに担当を決めて全部読むそうだ。そして良いと思ったものがあればもう一冊買って、1階のこども室に入れるという。これを聞いて、こども室での利用と保存ってどうやって両立するんだろうという疑問がようやく解消。
 また、その選書の時に得た情報を利用して、時々「新刊紹介」という催しをやるそうだ。さっき自分が2階の閲覧室で見た「新刊コーナー」は、この最新一年分の本のことだったのだ。さらっと一年分とか言うが実際書架の前に立つと結構な量で、いくら好きでもノルマで読むのは大変だろう。

  • 最後に。

 ツアーの〆に、児童文学館の今後についてお話。今年度中の閉館が決まり、70万点の資料は大阪府立中央図書館へ移されることになった。中央図書館では受け入れのために書庫を増設中で、5月頃から公開する。ただし移動するのは資料だけ。財団スタッフの手は離れて、今後は大阪府立中央図書館の人が直接管理することになる。どういった形で公開するかは、今調整中。閲覧・複写のみで、貸出はしないかもしれない。向こうも資料管理のプロではあるが、資料館と図書館とではまた性質が違う。今後どうなるだろうか…とのこと。

*1:いや、もちろん雑然と並んでいちゃ困るのだが。

*2:買った時に挟んである葉書とか広告の類、と言われた