複雑な世界、単純な法則
ネットワーク論、初めて読んだ。面白かったのでメモ。
- 作者: マーク・ブキャナン,阪本芳久
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2005/02/25
- メディア: 単行本
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- キイワードはスモールワールド。
スモールワールドとは少数の長距離リンクと、多数のリンクを持つハブで作られたネットワーク。また強い絆で結ばれたクラスタと、その架け橋となる弱い絆で作られたネットワーク。この構造の特徴は、一つの要素から別の要素への情報の伝わり方が驚くほど早いこと。人間関係で言えば、「私」から任意の人までの間には、たった6次の関係を隔てるだけで到達することができる。友達の友達の友達の友達の友達の友達は、アメリカ大統領かもしれない。いっつ・あ・すもーるわーるど。
送電線の繋がりも、脳のニューロンも、感染症の蔓延も、経済における貧富の差も、WWWのリンク構造も生態系も、みんなみんなスモールワールド。
- 「ハブ」の存在がネットワークを強くし、弱くする。
スモールワールドの中でも特に、多数のリンクを持つ「ハブ」は全体に与える影響が大きい。エイズの感染では大勢パートナーを持つ人、WWWではAmazonのようなリンクされやすいサイト、生態系では多くの種と関係の深い種。
スモールワールドはランダムな攻撃に強い一方、「ハブ」への攻撃を受けると崩壊しやすい。大勢パートナーを持つ人に集中的に免疫を持たせればエイズの拡大を食い止めるのに効果が高い。サイバーテロなら、「ハブ」となる重要なコンピュータが狙い撃ちされると危ない。生態系なら、色々な動物に食べられている生き物が絶滅すると大きくバランスが崩れる。
- 「ハブ」はさらに多くのリンクを集める。
モテる人は大勢にモテることによってますますモテる。金持ちは余裕のある金を投資に回すことでますます金持ちになる。Amazonはあちこちでリンクされて皆に見られるからますますリンクされる。
- 弱い絆が世界を広げる。
クラスタ同士を繋ぐ弱い絆も重要。家族や親しい友達ではなく、もう何年も会ってなくて今は外国に住んでる誰それさん、との関係の方が、自分の持つネットワークを劇的に広める役割を果たす。弱い絆はある時には安全弁となり、ある時には影響をあっという間に広める鍵となる。
一応この本は物理学の本らしいのだが、書かれていることは文理関係なくあちこちの分野に散らばっている。個々の要素の性質でなく、全体の構造に注目することで、まったく関係なさそうな分野の問題を同じ方法で考えられる、というのはすごい。あ、もしかしてこれが構造主義っていうのか。
自分と関係なさそうな分野にも触れることは大事。ただし、その時には構造に着目すること。この構造のハブは何(誰)?と。面白いだけじゃなく、実際に課題にぶつかった時に役立つだろう。
読みながら、最近読んだ色々な本が次々頭によみがえる。あれにも、これにもネットワークの考え方が出てきた。あわせて読むと余計面白いに違いない。
定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか? (新潮文庫)
- 作者: 三戸祐子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/04/24
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- 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,中島康裕,遠藤彰,遠藤知二,疋田努
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/03/24
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- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2009/05/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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