漂流系3冊

 最近読んだ本2冊と、ちょっと前に読んだ本1冊。

ある漂流者のはなし (ちくまプリマー新書(014))

ある漂流者のはなし (ちくまプリマー新書(014))

 37日間の漂流から生還した人へのインタビュー。
 ドラマティックな出来事だが、至って淡々とした語り口。魚を釣り、イルカやアホウドリが現れ、嵐に遭い、食料がなくなり、水がなくなり…といった出来事がとりとめもなく続く。何が先で何が後だったのか、時系列が曖昧。一方で、水の味や食べ物の味などの感覚はぞっとするほど生々しい。これが漂流している人の実感だったんだろう。

 その中で出てくる本人の言葉に、含蓄がある。

「星を見るんです。満天の、ものすごい数の星が、手が届きそうなくらい近くで瞬いている。(略)もう、今にも降ってきそうなくらいです。きれいだなあ。こんなときでも、きれいなものはきれいなんだ。きれいな星をきれいだと思える自分が、何か、よかったな、と思うんです」(p80)

 これ、最後の食料となったインスタントスープを食べた時の感想なのだ。人間ってすごい。

チムさいごのこうかい―チムシリーズ〈10〉 (世界傑作絵本シリーズ)

チムさいごのこうかい―チムシリーズ〈10〉 (世界傑作絵本シリーズ)

 こちらは漂流というより、難破した話。
 絵が可愛らしくて文章が子供向けなのでだまされそうになるが、実は結構ディープな内容かも。主人公をいじめる荒くれ者の船乗りが、難破しそうになった途端絶望して飲んだくれるとか。

復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇

復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇

 ちょっと前に読んだのがこちら。これも実話だが「ある漂流者の〜」の一種悟ったような穏やかさとはかけ離れて、ドロドロした世界。何より集団で漂流しているというのが大きい。
 難破の直接的な原因は鯨にぶつかられたこと。しかしそこに至るまでのチーム内の対立や、乗組員同士の差別など、原因の原因まで丁寧に書き出している。プロジェクト失敗の例として読むと、また別な痛痒さで面白い。