眠れなくなる宇宙のはなし

眠れなくなる宇宙のはなし

眠れなくなる宇宙のはなし

 宇宙とは何か?についての人間の考え方を、古代から最先端まで紹介した本。
 途中までは割合サクサク読める。なんだかんだ言っても、「地球は平ら」とか「星は天球に張り付いている」という考え方の方が、日常の生活感覚には合ってしまう。古代の人にも今の人にも、物理法則は平等に働いているんだものなぁ。そこから出発するので、なんとなく想像しやすい。
 手にとって確かめられない星の素材や距離をどうやって測るの?という、小学生以来の疑問も解決。そりゃ理科で白い星の方が温度が高いと教わるけれど、理由までは知らなかった。炎色反応かと思ってたよ。

 第六夜「ビッグバン宇宙論の登場」あたりから、想像力の及ばない話題が出てくる。最初の壁が相対性理論。空間が曲がってるってどんな状態ですか。ここは諦めて「なんか分からんが曲がってるらしい」といったん受け入れることにする。難しい本を読む時に時々使う手で、後を読んで行けば分かることがある。これでなんとかこの章はついていけた。

 第七夜の最先端の宇宙理論になると、もう駄目。「なんか分からんが…」の部分が多すぎて、凄いんだか凄くないんだか分からない。
 たとえば、

 最新の理論では、物質の究極の基本要素は小さな「粒」つまり点状のものではなくて、超ミクロの「ひも」状の存在だと考えているからです。この理論は超ひも理論と呼ばれています。(第七夜「新たな謎と革命的宇宙モデル」251p、以下同じ)

 は、はぁそうですか。なんか物凄いヒモがあるんですね。

超ひも理論によると、一つのひもがさまざまな「方向」に振動することで、現在知られている数十種類の素粒子に変化します。一本のバイオリンの弦が振動すると、さまざまな音色を奏でるようなものですね。

 ヒモが振動すると別なモノに??脳内に激しくのたうつ謎のロープ発生。

そしてひもが数十種類の素粒子に変化するためには、10通りの振動の方向、つまり10次元の空間が必要になると理論的に考えられています。

 うむむ…。
 でも不思議なもので、全然理解できないと思ったこの文章を書き写していると、それでも少しは飲み込めた気がする。さらっと読んだのがいけなくて、熟読すれば分かるのかなぁ。

 その他面白かったのは第三夜「合理的な宇宙観の誕生」で、民主主義への移行が神話への疑問をもたらし、合理的な思考をつみ重ねた自然哲学の発生をもたらす、という指摘。よその神話や違う考え方を知って、神様に疑問を持つことが出発点だったとか。だからガリレオのように宗教から弾圧されるひとも出る。そう言えば「盲目の時計職人」でも、神様が生き物をデザインしたという考え方に反論するのに一生懸命だった。

 生物のことを知ればおおっ奇蹟だ!と思うし、宇宙のことを知ればこれは神秘だ!と興奮する。出発点は神様否定だったのかも知れないけど、むしろ敬虔な気持になるところが面白い。