大阪市の新図書館パブリックコメント募集中

 こんなのを見つけた。

大阪市ホームページ|(仮称)こども本の森 中之島」施設基本方針(素案)についてのパブリックコメントを実施します(平成30(2018)年6月29日付)
http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/keizaisenryaku/0000440070.html

 募集期間は平成30(2018)年6月29日〜7月27日まで。施設の構想がコンパクトにまとめられている。ニュースで切れ切れに情報を得てはいたが、このページでようやく全体構想が分かってきた。改めて情報を整理。自分のために。

  • ここまでの経緯
    • 平成29(2017)年9月19日 安藤忠雄氏から大阪市へ寄付の申し出。各社報道によれば*1骨子は下記のとおり。
      • 大阪市北区中之島公園内の市有地に、子ども向けの図書館*2を建設して、市に寄付する。
      • 建物は安藤氏が設計、建築。準備費、開館後の運営費は寄付で賄う。
    • 平成29(2017)年11月 市と安藤忠雄建築事務所の間で覚書締結。詳細な内容は分からないが、市と事務所の役割分担を定めたもの。
    • 平成29(2017)年12月5日 市議会で、負担付き寄附*3の受納を議決。この際の議論で、もう少し詳しい条件が明らかになる*4。以下に要約。
      • 寄附の内容:「本の森」建物と、「本建物の建設等に伴い撤去が必要となる公園施設の代替となる公園施設の用に供する建物*5」。
      • 条件:大阪市の公の施設として設置する旨の条例を制定し、「子供等に対し、文学を中心とした良質で多様な芸術文化等に触れる機会を提供する施設として開館すること」。大阪市が条件に違反した場合、寄附者は寄附に係る契約を解除できる。その場合大阪市は「本の森」と代替施設を返還しなくていいが、それらにかかった費用を負担する。
      • 代替施設の完成後、本の森の寄附を受けるまでの間に、市の責任による理由で契約を解除した場合、大阪市は代替施設の建設等の費用を負担する。
      • 大阪市は企業、個人からの寄附を募集、寄附金を収受。寄附者は企業等に対して寄附の依頼、勧奨を行うという役割分担。
      • 企業・個人からの寄附で集めるのは、準備費用と5年分の運営費に当たる金額。
      • 準備費用:蔵書の購入費や蔵書管理のためのシステムの調達、施設に必要な備品等の購入費。概算で5,000万程度。
      • 運営費:人件費、光熱水費、設備の保守点検費、蔵書の購入費、事業費、修繕費等。概算で1年5,000万円程度。
      • 6年目以降も継続して寄附を確保する方策として、市からの情報発信、クレジットカード決済利用、館内への寄付者銘板設置、ガバメントクラウドファンディング*6などを検討している。
    • 平成29(2017)年12月21日 寄附金受付開始

大阪市ホームページ|(仮称)こども本の森 中之島」への寄附のご協力をお願いします
http://www.city.osaka.lg.jp/keizaisenryaku/page/0000420126.html

    • 平成30(2018)年4月5日 建物内観を公表*7
    • 平成30(2018)年6月27日 大阪市会で、3月までに寄付金3億118万円が集まった旨の報告。同日、建物内部のイメージ図等も発表*8
  • 図書館の基本構想(パブリックコメント素案の情報から、xiao-2が気になったところをピックアップ)
    • 延床面積:約800平方メートル
    • 1階〜3階 鉄筋コンクリート
    • 乳幼児から中学生とその保護者がメインターゲット(一般の方の入場も可)
    • 蔵書数25,000冊、障がいのある子どもが利用できる図書や、外国語の図書、しかけ絵本等の特色ある図書も適宜収集
    • 貸出はしない
    • 配架はゆるやかなゾーニングで行う
    • 入場料:無料*9
    • 施設の運営方法:指定管理者による運営
  • 今後の予定
    • 平成30(2018)年9月 設置条例提案予定
    • 平成30(2018)年秋ごろ着工
    • 平成31(2019)年秋ごろ開館予定
  • 感想など
    • ずいぶんスピーディーな展開だなー、というのが最初の感想。公表されている開館予定までは1年ちょっとしかない。建物の工事もさることながら気になるのは中身だ。運営は指定管理者によるとのことだが、そちらの公募情報は見つからなかった。公募ではなく、もう決まっているのだろうか。
    • 運営費を寄附で賄うと聞くと「6年目以降ちゃんとお金集まるの?」とは誰しも思うところで、議会でも複数質問されていた。実際に3月時点で集まった金額は法人から2億4934万円、個人から5185万円というから、やはり法人が主力だろう。
    • 蔵書25,000冊というとそれほど大きな規模ではない。大阪市立図書館の統計*10に各館の蔵書冊数が載っている。児童書の冊数だけで見れば生野図書館(平成28年度24,183冊)と同じくらいか。
    • イメージ図を見ると、吹き抜けを囲う壁一面に本棚を設置し、本に囲まれた空間を作るそう。つい頭をよぎるのは先日の大阪北部地震で流れていた、近隣にある大阪府中之島図書館の惨状。新図書館がイメージ図のとおりだと、吹き抜け2階分の高さから本が降り注いできそうで怖すぎる。もっとも素案にも「防災対策を徹底」とあるし、これはあくまでイメージであって、当然対策が取られるのだろう。
    • 中之島図書館を思い出したついでに歴史を振り返れば、そもそも中之島図書館も篤志家の寄附によるものだそう。明治のお金持ちはスケールがでかい*11

住友グループ広報委員会|大阪府中之島図書館 人物編
https://www.sumitomo.gr.jp/history/related/nakanoshima-lib/index03.html

*1:2017年9月19日付け日本経済新聞安藤忠雄氏、大阪・中之島に児童図書施設」、同日付産経フォト「安藤忠雄氏 大阪市に児童向け図書館の寄付提案」、同日付毎日新聞大阪・中之島にこども図書館寄贈 「本や芸術に触れる場に」 寄付募り設計・建築」、9月20日付け朝日新聞安藤忠雄さん「こども本の森」建設、寄付へ 大阪中之島

*2:どうでもいいことだが、この呼び方が「児童図書施設(日経)」「児童向け図書館(産経)」「児童図書館(毎日)」と新聞によってばらついているのは何なんだろう。

*3:負担付き寄附は、地方自治法第96条9項で議会の議決を要すると定められている。なお、ググったら詳しそうなサイトが出てきた。地方自治法web辞典|議決事項のうち「負担付きの寄附又は贈与を受けること。

*4:全文は、大阪市会会議録で読める。平成29年9〜12月定例会常任委員会12月05日 議案第176号

*5:xiao-2注。以下では、略して代替施設と呼ぶ

*6:xiao-2注。ガバメントクラウドファンディングの参考:Readyfor|ふるさと納税

*7:平成30(2018)年4月5日付け日本経済新聞大阪市こども本の森、完成予想図が判明

*8:朝日新聞デジタル「子ども図書館に寄付金3億円 安藤忠雄さん建設、着工へ」(2018年6月27日付)

*9:ただし12月の会議録では、安定運営のために物品販売やイベント等も検討するような言及があった。有料の部分もあるということか。

*10:大阪市立図書館ホームページ|大阪市立図書館の統計

*11:…と感心して眺めていたら、工期も工費も大幅オーバーしたと書いてあった…その轍は踏まないで。