日本図書館研究会第57回(2015年度)研究大会に行ってきた。〜その3
前回の続き。グループ研究発表の後半。例によって、印象に残った数点だけメモ。間があいたので*1もう記憶も微妙。誤記、誤解ご容赦。
- 「情報組織化関連記事一覧」LOD化にみる新たな連携の可能性(情報組織化研究グループ)
- 発表者は横谷弘美氏の予定だったが、都合により和中幹雄氏の代読。
- 「情報組織化関連記事一覧*2」(以下「一覧」)をLOD(Linked Open Data)化する試み。
- LODの定義は2つ。1つ目は機械可読性、2つ目は2次利用可能性。
- オープン性には1〜5のレベルがある。1-3はライセンス、3-5はフォーマットに関する基準。
- ウェブ上のデータをつなぐことで新しい価値を生み出すマッシュアップ性に特徴。
- 「一覧」は再利用自由なTSVデータだった。さきのオープン性の定義でいくと3つ星。
- 第一次検討ではRDF化。Simple DCを採用し、Linkedata.org*3を利用。この時点で4つ星に。ただし他のLODとのリンクに は難。
- 第二次検討では項目全般の見直し。領域を超えた活用のため、図書館特有の概念にこだわらず。
- LOD同士のつながり。Web NDL Authorities*4にリンクし、ここからWikipediaやVIAF*5につなげる。
- NIIのKAKEN*6やCinii*7も考えたが、重複レコードや永続性などの点で難。
- 分類はNDLSH*8に合致すればリンクできる。ただし専門用語などは参照が欲しいので、分類テーブルを独立。
- 追加しなかった項目はISSN、版、著者など。
- 質疑
- 「近来の日米韓図書館立法と政策に関する位置検討」(図書館サービス研究グループ)
-
- アメリカ
- 連邦レベルでの法はない。
- MLSA*19の一部であるLSTA*20が公共図書館への財政の根拠となる*21。設置・運営などの基準は州レベル。
- 補助金は人口ごとに州へ分ける。州内は州政府が分配し、計画を出す。
- LSTA以外では全国レベルの法の影響は少ない。財源は自治体75:州15くらい。サービス基準は州により色々。
- 連邦レベルの政策としては、E-rate*22、愛国者法、CIPA*23など。補助金を受けることで拘束されるという警戒の声もあり。
- E-government Act (2002)*24。政府サービスをなるべくオンラインで提供していこう、というもの。しかしオンライン環境は格差があり、公共図書館がアクセス保障を担うことに。
- 韓国
- まとめ
- 質疑
- xiao-2感想:こういう大づかみな政治的背景を知ることは必須だが、改めて触れる機会というのは案外ないもの。大学の司書課程で教えてほしいことの一つだなぁ。自治体の図書館に国のお金が(結果として)回る仕組みとしては、厚生省の雇用創出基金も頭に浮かんだ。
- アメリカ
- 「大学図書館と「専門的職員」−大学設置基準等の歴史的変遷−」筑波研究例会
- 平成26(2014)年、「大学ガバナンス改革の推進について(審議まとめ)*26」が出た。この時高度専門職に言及があった。リサーチアドミニストレータ等。しかし、どのような内容のものかは大学教育部会の審議でも混乱。
- 大学設置基準*27第38条には、伝統的な専門的職員が規定されている。
- この語はいつ登場したか。成立経緯の文言を追う。平成2(1990)年7月30日付「司書等の専門職員」。平成3(1991)年2月8日付「司書」+情報処理やデータベースサービス等、平成3(1991)年7月1日「専門的職員」。
- 昭和46年(1971)、「大学設置基準」が一部改正。
- 新旧基準を対照すると、汎用的数値基準が平成3(1991)年からなくなった。また「図書館の専門的職員」が明記された。分科会名にも「図書館」とついており、位置づけが重い。
- 平成28(2016)年1月18日に公開された「大学における専門的職員の活用の実態」*28では、健康管理、図書館に加え、キャリア支援等新しい職種が規定された。ただし法令上の規定は当面なし。
- 伝統的な専門的職員は「大学設置基準」で規定、この背景に大学図書館近代化運動。これが現代的展開を経て、大学のガバナンス改革の文脈で再定義された。学習支援など、多面的なあり方へ。
- 質疑
- フロア
- それぞれのドキュメントの位置づけが不明。今後の研究の方向性は。
- 発表者
- 今回はひとまず歴史的事実として、その脈絡を見た。
- フロア
- 大学図書館の実態として、専門職の実情はどのようなものか。
- 発表者
- 専門職として位置付けていない場合もあることが指摘されている。実際に委託や外注が進んでいることからも、専門性には疑問も。位置づけが揺らいでいる。
- フロア
- xiao-2感想:図書館の文脈ではなく、大学ガバナンスという文脈で見ること。ひとつ前の発表もそうだが、マネジメントを考えるならこういうドキュメントの読解能力は必須。
- 「電子書籍をめぐるネットワーク情報の索引化」「マルチメディアと図書館」研究グループ
- 2014年12月に、NDC10版*29が刊行された。電子書籍分野へのNDC10の有用性を調べた。具体的には、NDC10内で電子書籍がどのように扱われているか、電子書籍関連のネット記事にNDC10で分類を付与するとどうなるか。
- 出版の各段階をどう分類するか。023が大きく変化。ネット記事にNDCを付与するのに迷った例としては、DPIGフォーマットに関する記事を「023(電子出版)」にするか、「007.638(文書作成ソフトウェア)」にするか。またKindleは販売か出版か。
- 知的財産、著作権は、507.2産業財産権から、021.2へ。また国ごとに制度が違うので、地理区分も要りそう。
- デジタル化、ネットワーク化に関する記事などは、従来の区分が融合しており、詳しい注記など工夫がいる。
グループ研究発表の5〜8は以上。聞いていると面白かったのに、メモを見返すと全然正確に理解できていないのを実感する。これは復習が必須だ。特に6と7は、後日復習のためにリンク集でも作ってみようかなぁ。
というわけで、興味の湧いた人は『図書館界』の7月号に載るという報告記事を読むべし。
*1:突然1ヶ月もあけて何をやってたのか?というと、単に怠けていただけ。すみません。
*3:Linked Data - Connect Distributed Data across the Web
*4:Web NDL Authorities:国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス
*9:Open Researcher and Contributor ID
*12:民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年七月三十日法律第百十七号)
*13:公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準(文部科学省告示第百三十二号)
*14:子どもの読書活動の推進に関する法律(平成十三年十二月十二日法律第百五十四号)
*15:文部科学省|学校図書館法の一部を改正する法律等の施行について(通知)(文初小第447号)平成9年6月11日
*16:文字・活字文化振興法(平成十七年七月二十九日法律第九十一号)
*17:文部科学省|地域の情報ハブとしての図書館(課題解決型の図書館を目指して)
*19:博物館・図書館サービス法(Museum and Library Services Act)
*20:高等教育法の一部を包括する図書館サービス及び技術法
*21:参考:CA1171-LSCAからLSTAへ−アメリカ公共図書館政策の転換−/秋山勉
*22:参考:2006年度 国立国会図書館調査研究報告書No.40「米国の図書館事情2007」より、1.5.2 E-rateの概要と運用の実情 〜公共図書館との関連を中心に〜
*23:参考:E1576 - インターネット・フィルタリングの現在:CIPAから10年(米国)
*24:National Archive|E-Government Act of 2002
*25:参考:CA1635 - 韓国の図書館関連法規の最新動向/金容媛、E760 - 韓国の図書館情報政策委員会,図書館界の尽力により存続
*27:大学設置基準(昭和三十一年十月二十二日文部省令第二十八号)