2015年にみききしたもの。

 2015年にみききしたものを振り返ってみる。

  • 読んだ本

 読書記録を振り返る。内容を忘れてるものが結構多く、雑な読み方をしていると反省。せめていくつかピックアップすることで、自分の忘却力への抵抗とする。

上流工程でステークホルダーの要求がまとまる技術 (エンジニア道場)

上流工程でステークホルダーの要求がまとまる技術 (エンジニア道場)

 テーマはシステム開発だが、エンジニアに限らず、ものごとを調整するときの基本的な考え方として参考になる。

わたしはコンシェルジュ (講談社文庫)

わたしはコンシェルジュ (講談社文庫)

 「知のコンシェルジュ」など何かと引き合いに出されるコンシェルジュの仕事。印象は、まさにプロフェッショナル。特に伝統の長いヨーロッパでは格式の高い専門職という意識が強く、チーフコンシェルジュはすべて男性だそうだ。ジェンダー的観点では残念なことだが、求められる職能をイメージするのには助けになる。もちろんサービスへの姿勢やノウハウも勉強になる。サービスを体験できる機会はなかなかなさそうだ*1が、本くらいは読んでおかないといけない。

    • ラーニング・アロン 通信教育のメディア学

ラーニング・アロン 通信教育のメディア学

ラーニング・アロン 通信教育のメディア学

 明治時代の講義録からeラーニングまで、通信教育について色々な角度から取り上げた本。2008年刊行で、MOOCブームより前までの動向が整理されている。年表と基本文献一覧があるのがありがたい。今後も何かと参照することになりそう。

    • 地方改良運動期における小学校と地域社会

 地方改良運動の文脈において、小学校が学科教育を超えた地域の拠点として位置付けられていく過程を分析した本。内務省と文部省それぞれの動き、優良事例の称揚による意識向上などが、公文書等の史料から読み解かれる。「まちづくり」という視点から図書館が色々な役目を期待されたりしている現在と、どこか似て見えなくもない。

    • 商店街はいま必要なのか

 サブタイトル「「日本型流通」の近現代史」の方が内容に合っていると思う。いま当たり前のものとして眺めている買い物の場の風景がどのように形成されてきたか概観できる。第2章で出てくる、昭和初め頃の百貨店の通信販売の話が面白い。「こういう体形・年恰好の女性に似合うこんな感じの和服を」といった、商品名を指定しないで見繕ってもらう注文が可能だったそうだ。モノだけでなく情報も買えるサービスだったのだなぁ。

コンゴ・ジャーニー〈上〉

コンゴ・ジャーニー〈上〉

コンゴ・ジャーニー〈下〉

コンゴ・ジャーニー〈下〉

 アフリカの奥地を探検した生物学者の体験記。ノンフィクションだが、「秘境の湖にいる伝説の生物を見たい」という動機からしてフィクションっぽいし、相棒との掛け合いやオカルトじみた体験など、ほとんど小説のよう。一方で経済格差やジェンダーなどの現代的な社会問題が顔を出すこともある。どちらを描くときにもブレない客観的でユーモアのある文体が、小説のような現実を教えてくれる。

 自分はそれほどマンガ・アニメ・ゲームへの造詣が深くない。中には好きな作品もあったけれど、全体としてはひとつの展示として解説と作品紹介を楽しんだ。同時に、この手のものを展示する難しさも感じた。アニメは絵が動いて声が出てないと理解しにくく、ゲームは遊んでみないと理解しにくい。会場にも、ダンスダンスレボリューションが実際プレイできる状態で設置してあるなど、ずいぶん工夫が感じられた。この分野はすごい量の知識の蓄積がされているのだろうけれど、その知識を次世代まで伝えるにはどうすればいいかという課題にまさに直面している段階なのかもしれない。

 自分が行った時はものすごく混んでいて、ひとつの作品の前から10分ほども動けないくらいだった。肉筆画はとても美しく、保存状態も良かった。秘蔵されてきたことで傷んでいないという面もあるのだろう。よくそんな表現を思いついたなと笑ってしまいたくなる作品もあった。全然いやらしくないという感想を持つひともいたようだが、感覚はいろいろで、自分の場合はちょっとだけ恥ずかしかった。エロティックアートであるというのは事実なので、「面白いけどちょっと恥ずかしい」くらいの感覚で接する文化というのもアリではないかな、と思っている。

 見せ方がすごくうまいと思った。科学書でしかもほとんど洋書というマイナーな展示を、うまく体系立ててある。会場中心に各学問の発達と関連をイメージ化したオブジェのようなものがあり、それぞれのコーナーにもそのオブジェのミニチュアがあって、全体の中でどこにあるか確認できる。もっとも自分は解説ツアーを聞けたのでさらに分かりやすかったということもある。来場者に、若い男性が多いのも比較的珍しく思った。
 展示方法はわりと大胆。会場は明るいし、ケースも側面がベニヤ板みたいな奴で、見ながらうっかり寄りかかったらキャスターがずずいと動いてたまげた。温湿度管理をしているようにも見えなかった。極め付けは入口近辺の「本の回廊」で、古そうな洋書が図書館のように書棚に並べてあり、触ることを妨げるものもない*2
 展示されているものは貴重書とは言え活字本だし、「本の回廊」は現役もしくは複本の図書館蔵書で作られているように見えた。リスクとメリットを天秤にかけて、美術展示ほど守りを固くしない方向を選んだのだろう。

 三つ通しての感想は、分野をとわず、体系的に分類・整理して見せることの大事さ。

  • イベントなど
    • シンポジウム「アクセスの再定義 : 日本におけるアクセス、アーカイブ著作権をめぐる諸問題」:これはレポートを書いた。
    • JAL2015 公開ワークショップ「日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための提言 Ⅱ」:こちらはレポートを書けず。よそのブログ*3にレポートがあるので参照。

 2015年に聞けたイベントはこれだけ。図書館総合展にも全国図書館大会にも行かなかった。

*1:著者の勤務先ヨコハマインターコンチネンタルホテルの宿泊プラン一覧http://www.interconti.co.jp/yokohama/stay/plan/index.html

*2:ただし本を手に取った来場者は警備員に注意されていたので、一応触ってはいけないことになっていたようだ。

*3:2015/12/1egamiday3:ワークショップ「日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための提言II」(海外日本美術資料専門家(司書)研修・2015)のメモ)