MOOCを調べてみた
とある事情から、勉強のためいろいろと読んだ。読んだだけだとなかなか頭に入らないので、メモにまとめてみる。
- MOOCとは何ぞや
MOOCとはMassive(ly) Open Online Courseの略で「大規模公開オンライン講座」と訳される。MOOCはインターネット上でオンライン講座を開設し、受講者を広く集め講義を行う取り組み
出典:CA1811 - 動向レビュー:MOOCの現状と図書館の役割 / 重田勝介)
2012年〜。アメリカのベンチャー企業によるプロバイダ。創設者はスタンフォード大学の教員Daphne Koller(ダフニー・コラー)*3、Andrew Ng(アンドリュー・ング)*4両氏。
自らコース内容を作るのではなく、大学の講義を公開するプラットフォームとしての役割。ベンチャーキャピタルからの出資を受けている。州立大学と提携して有料の修了証を発行し、これも収入源となっている。日本からは、2013年に東京大学が参入*5。
2012年〜。これもアメリカのベンチャー企業によるプロバイダ。共同創設者はSebastian Burkhard Thrun(セバスチャン・スラン)氏。スタンフォード大学人口知能研究所の教員でありGoogle特別研究員でもある。Couseraと異なりコンテンツは自前主義をとり、Udacityが厳選した講師により講義が行われる。講師は大学教員に限らず、企業人から一般人まで「教えることが上手い」という基準で選ばれる。ベンチャーキャピタルからの出資を受けているほか、企業と提携し人材紹介によるビジネスも行う*7。
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- edX*8(エデックス)
2012年〜。マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が共同で作った非営利の教育機関。コンテンツは大学の講義。運営資金は大学負担。受講生の学習データをビッグデータとして活用することに意欲的で、研究論文も出ている*9。MOOC開発のためのソースコードはオープンにされている。日本からは、2013年に京都大学*10、2014年に大阪大学*11が参入。
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- Khan Academy*12(カーン・アカデミー)
2008年〜。当時ヘッジファンドで勤務していたSalman Khan(サルマン・カーン)氏が、自ら講義して撮影・動画アップを行ったことから始めたもの。現在はNPOとなっている。ゲイツ財団などからの寄付による慈善事業として運営されている。
- 日本の事例
- JMOOC(ジェイムーク 日本オープンオンライン教育推進協議会)*13
2013年に大学・企業などにより創設された非営利団体。JMOOC自体は複数の講座配信プラットフォームをまとめるポータルサイトの役割を果たし、gacco(提供はNTTドコモ)*14、OpenLearning,Japan(提供はネットラーニング)*15、OUJ MOOC(提供は放送大学)*16がJMOOC公認の配信プラットフォームとなっている。
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- Manavee(マナビー)*17
2010年〜。当時東京大学の学生だった花房孟胤(はなふさ たけつぐ)氏が創設*18。事業に賛同する学生や一般の人が講義を行った動画を配信する方式。運営資金源はよく分からなかった。画面に企業広告が載っているので、広告収入かもしれない。
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- eboard(イーボード)*19
2012年〜。会社員の中村孝一(なかむら こういち)氏が創設。現在はNPO法人となっている。運営資金源はREADYFORによる寄付、教材制作に関わる助成金等らしい。教育委員会との連携により授業内での活用も行われている。
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- schoo WEB-campus(スクー ウェブ キャンパス)*20
2012年〜。会社員だった森健志郎(もり けんしろう)氏*21が2011年に立ち上げたベンチャー企業による運営。講師をschooが選定し、作成した動画コンテンツを配信。生放送を見るのは無料で、アーカイブを見るのには有料で会員になる必要があるという有償モデル。
- 過去の事例、OCW
MOOCと呼ばれるサービスは2010年前後に開始しているが、大学の講義を無料でオンライン公開するというモデルそのものは2001年にマサチューセッツ工科大学(MIT)が開始したオープンコースウェア(OCW)*22が萌芽といわれる。当初はeラーニングビジネスとしての公開を検討していたが、事前の調査で収益が見込めないことが判明し、無料公開に方針転換したという。現在はMITに限らず行われているようだ。
OCWとMOOCとの違いとしては、大学の教室での講義をそのまま録画・配信するOCWに対し、MOOCでは動画説明を10分程度に留める場合が多い点。動画配信手段としてYoutubeを利用するといったプラットフォームの側の都合もあり、また初等教育分野で成功したカーン・アカデミーの方法に倣うという理由もある。また、受講者同士のコミュニティ機能を充実させることで「孤独な学習」にならないよう工夫されている。
- その他、xiao-2が気になるポイント
- 学習データ分析
Massiveという言葉が示すように、従来のeラーニングよりはるかに大規模な学習者が受講するMOOCでは、ソーシャルデータを含む学習データの分析・活用が注目されている。現在は学習データ蓄積に関する標準がないため、国際標準規格の策定がIMS GLOBALとADLにおいて進められている*23。
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- ヘッジファンドへの活用
Udacityの人材紹介ビジネスのように、企業にとって「欲しい人材」を探すための場としてMOOCが活用される可能性がある。これは大学でも同じことで、edXを利用したMITの講座で、抜群の成績をおさめたモンゴルの天才少年を特待生としてスカウトした事例が紹介されている*24。
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- 法制化
MOOCで正式な大学の単位を取れるようにする、就職活動で通用する証書を得るという動き。
- 参考文献
- 図書
ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)
- 作者: 梅田望夫,飯吉透
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- 記事・論文
- 重田 勝介. MOOCの現状と図書館の役割. カレントアウェアネス / 国立国会図書館関西館図書館協力課 編.. (318):2013.12.20.
- 船守 美穂. 21世紀の新たな高等教育形態MOOCs(1)世界で広がる無料のオンライン講義とは. カレッジマネジメント / リクルート [編].. 31(4)=181:2013.7・8.
- 船守 美穂. 21世紀の新たな高等教育形態MOOCs(2)MOOCが高等教育へ与えるインパクト. カレッジマネジメント = Recruit college management.. 31(6)=183:2013.11・12.
- 船守 美穂. 21世紀の新たな高等教育形態MOOCs(3)主体的学びを促す反転授業. カレッジマネジメント = Recruit college management.. 32(2)=185:2014.3・4
- 船守 美穂. 21世紀の新たな高等教育形態MOOCs(4)教育のモジュール化が生む、柔軟なカリキュラム. リクルートカレッジマネジメント = Recruit college management.. 32(4)=187:2014.7・8.
- 船守 美穂. 21世紀の新たな高等教育形態MOOCs(5)目的に応じて多様な反転授業のデザイン. リクルートカレッジマネジメント = Recruit college management.. 32(6)=189:2014.11・12.
- 船守 美穂. 21世紀の新たな高等教育形態MOOCS(最終回)オンライン教育、ふたたび. リクルートカレッジマネジメント = Recruit college management.. 33(2)=191:2015.3・4.
- 岡本 真. 河瀬 裕子. 下吹越 かおる. 図書館×MOOC : オンライン大学講座で実現する学習プログラム提供. 図書館雑誌.. 109(7)=1100:2015.7.
- 秦 隆博. eラーニングにおける最新動向について(上). 日本データ通信.. (204):2015.7.
- 秦 隆博. eラーニングにおける最新動向について(下). 日本データ通信.. (205):2015.9.(←これはまだ読んでないが、備忘のために挙げておく)
- 記事・論文
*1:2013.12.20CA1811 - 動向レビュー:MOOCの現状と図書館の役割 / 重田勝介
*3:TEDGlobal2012 · Filmed June 2012 · 20:40 ダフニー・コラー 「オンライン教育が教えてくれること」
*4:Wikipedia|Andrew Ng、ご本人らしいTwitterアカウントはこちら
*5:東京大学ホームページ|大規模公開オンライン講座(MOOC)
*7:2012年からCouseraでも人材紹介業を行っているらしい。
*9:Studying Learning in the Worldwide Classroom Research into edX’s First MOOC(PDF)
*18:同氏は2014年4月からは代表を離れている。
*23:秦 隆博. eラーニングにおける最新動向について(上). 日本データ通信.. (204):2015.7