緊急シンポジウム「近デジ大蔵経公開停止・再開問題を通じて人文系学術研究における情報共有の将来を考える」に行ってきた。〜その3

緊急シンポジウム「近デジ大蔵経公開停止・再開問題を通じて人文系学術研究における情報共有の将来を考える」
http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~nagasaki/daizokyo2014.html

 その1その2の続き、レポート第三弾。例によってxiao-2が聞き取れて理解できてメモできて、なおかつ覚えていた範囲のレポート。項目立ては適当。敬称はおおむね省略。

 お昼休憩の後、再度永崎研宣先生と安岡孝一先生による導入。ここは省略*1
 続いて、新たなパネリストからのお話。

  • 壇俊光さん(弁護士*2
    • 自分からは、議論の元になる著作権の基礎知識の話をする。
    • 著作権は権利の集合体。複製、公衆送信等、個々の行為についての支分権が束になったもの。従って個々の行為が問題になる。保存のための複製なら複製、公衆送信なら公衆送信など、どの行為について考えるのかまず特定する必要がある。
    • 保護される権利には、著作財産権、著作人格権、著作隣接権がある。
    • 何が著作物として認められるか*3。お金にならないものでも著作権はある。単なるアイディアは駄目。データを集めたものでも編集著作権*4が生じることがある。
    • 二次的著作物*5。たとえば翻訳など。
      • 翻訳でもすべて対象となるわけではなく、創作性が必要。人間のやった翻訳なら、たいてい認められる。機械翻訳だと微妙。
      • 食物連鎖のようなもので、元々の著作物に自分の色を付け加えると二次的著作物になる。元の著作者は二次的著作物にも権利が及ぶが、二次的著作者は元の著作者の権利に影響しない。
    • 共同著作物:分離すると意味がないもの*6
    • 職務著作物:法人が著作者となるもの*7
    • 著作物の譲渡*8
      • 譲渡を契約で明記していない場合は、譲っていないことになる*9
      • 著作人格権は譲渡できない。
    • 権利制限事由について
      • すべて著作権で保護されて他の人が使えないと困るので、著作権が制限される範囲を設けている。
      • 支分権に該当する行為は基本的にクロ、ほとんどシロ*10がない。皆さんが「これは大丈夫だろう」と思っていることはだいたいクロ。その周辺にはグレーの海。
      • 私的複製は30条によって可能となっている*11
      • NDLは31条*12の制限事由に該当する。
    • 著作権はいつまで保護されるか。
      • 没後50年*13。変名なら公表から50年*14。ただし変名でも、明らかに本名が分かるときは没後50年となる*15。旧著作権法ではこの規定がなかった。変名の著作物の権利が争われた判例としては、チャップリン映画著作権事件*16というのがある。
      • 共同著作物の場合、保護期間は最後に亡くなった人からカウントして50年*17。また共同著作物の場合、人格権の行使には著作者全員の合意が必要*18。ただし裁判を起こす場合は、一人でも可能。
    • 著作権法
      • 著作権法では、実名の著作物の保護期間は著作者の没後38年。旧著作権法ができたときには30年*19。そのあとじわじわ広げている。
      • 翻訳権も認められていた。
      • 制定時の著作権法はとても雑。第一条で全部の範囲を述べている*20。その後映画が加えられたり、改訂されている。
    • サンフランシスコ平和条約15条では、連合国の著作物の保護期間を長くする規定がある。外国の著作権を尊重していなかったからその分増やせ、というもの。
    • フェアユース。公正な利用であれば著作権の侵害に当たらないという考え方。アメリカにはフェアユース規定がある。日本の著作権法は、クロになる部分が多すぎて使いにくい。間接侵害も多く認められがち。
    • 文化の発展における流通強化の軽視。
    • NDLは、著作権が切れているなら躊躇すべきではない。ビジネスの問題と文化の問題は分けるべき。
  • 岡村久道さん*21(弁護士)
    • 南伝の著作権について、問題を整理する*22
      • 纂訳は漢文パーリ経典の二次著作物になるのか?
      • 誰が権利者なのか?職務著作物か、奥付に示された個人か?
      • 著作権保護期間は満了しているのか?
      • 出版社の主張には正当な理由があるのか?
      • 大正新脩大蔵経は編集著作物なのか?大蔵経自体が二次的著作物と考えると、個々の部分は二次著作物、全体は編集著作物。原典があって、底本があって、それを修正したものがあって、それを集めた編集著作物という扱い。
    • 権利の主体/客体/内容をそれぞれ考える必要がある。
    • 権利の枠組み。まずは著作物に該当するか?これは著作権法の2条1項1号で定義しており、10条で例示している。保護対象は6条で定めている。たいていのものが入る。さらに13条で例外規定があり、法令などがこれに当たる。
    • 二次的著作物。著作物として認められるには、新たな創作性が求められる。大正新脩大蔵経で返り点を打ったことが創作性に入るか。その場合、返り点を外して公開すれば、返り点を打った人への侵害にはならない。
    • 編集著作物。素材の選択、配列に創作性があるもの。個々のものを取りだすと、編集著作物ではない。
    • 創作性とは何か。
      • 誰がやっても同様の表現となるものの場合は、「不可避的」として創作性が認められない。選択の幅の大小で決めるパターンもある。
      • あるいは、幅があってもありふれた表現では認められない。たとえば年賀状のあいさつ文は「あけましておめでとう、謹賀新年、今年もよろしく」などの決まり文句。いくら並べ方を変えても、これは創作性がない。
    • 著作者人格権。死後も一定限度認められる。ただし今回の件では問題にならない。
    • 著作権裁判を起こす時には、元のものとコピーされた(と思われる)ものの対比表を作って、同一性を示すことが求められる。
      • まずは創作的表現と思われる部分を一覧表で箇条書き。
      • それらに創作性があるかチェック。創作性のある部分について、同一性をチェック。
    • 職務著作物。職務として行ったか。法人の名義で公表されたか。今回の場合は高楠順次郎博士功績記念会というグループとしての著作物なのか、高楠博士個人の編集著作物なのか。あるいは、個々のパーツである経典の著作権も博士に帰すという考え方もありうる。
    • 補足。
      • インターネット・アーカイブというサービスがある*23。ネットの過去のデータを集めるもの。
      • ウェブ魚拓*24。サイトの、ある時点での状態を記録するもの。これはアメリカのサーバを使っている。アメリカだとフェアユース規定があるのでできるが、日本だとやれない。
      • NIIのGenii*25。これは著者の許諾によりアーカイブを残している。Ciniiでも論文を蓄積しているので、DBを作っている会社から民業圧迫と言われたこともある。
        • アメリカでも、判例DBが出来た時にデータベース業者からクレームがついた。判例は公のものだろうと思うが、そういうこともある。
      • 素材は国が出す、その加工は自由というのが一番いい方向だと思う。
      • オープンガバメント。国が持っているデータをできるだけ出したい。その際にも民業圧迫という声があり得る。一方でプライバシーの問題もある。裁判の公開や、知る権利との関係を考えていく必要がある。
  • 永崎先生
    • ここで休憩を挟み、山田先生とミュラー先生より、人文系学術情報共有の現場の話をしていただく。
  • 山田奨治先生*26国際日本文化研究センター
    • 電子化古事類苑プロジェクト*27について紹介する。SAT大正新脩大蔵経テキストデータベースと似た部分もあり、違う部分もある。
    • 古事類苑とは*28
      • 明治から大正にかけて編纂・刊行された百科事典。項目が概念分類となっているのが特徴。類書を編集したもの。和装と洋装がある。
      • 1879年に、文部省の西村茂樹の建議で作られた。「文運が開けて外国のものが入ってきたが、これを我が国のものと比較するためにはたくさんの書物を見なくてはならず不便であるから、類書をまとめたものを作ろう」という趣旨のことを言っている。
      • 編纂過程。大規模プロジェクトで何度も頓挫しかけている。1886年以降は東京学士会院など。編纂に関わった人の名前が分かる記録が残っている。ただし現物の奥付には出てこない。この場合、職務著作物の扱いになるのかもしれない。
      • 全巻が完結したのは1914年。1931年からは吉川弘文館で発行。1巻8650円。現在出版社のホームページで見るとどれも版元品切れ状態*29古本市場にも結構出回っていて、2万5千円から25万円まで幅がある。
      • 編纂費用は188,791円。これは編纂の謝礼のみ。現在の額でいうと1.5〜2億円。
    • 色々な古事類苑DB
    • 部によってページ数がだいぶ違い、公開しているものとしてないものがある。これを電子化したものは色々ある。
    • 課題
      • 全文検索がかなり弱い。ルビ・割注をまたぐ検索はできない。
      • 外字をどう検索するか。
      • メタデータの付与。たとえば和暦にユリウス暦のデータをつけたり、地名から緯度経度をつけたりしたい。
    • 現在のペースだと、すべてを入力するのにあと60年かかる。費用はあと2億円あれば入る。大蔵経よりは少ない。
    • DB作成に関わる研究者の貢献、処遇について
      • こうしたデータは広く共有されるべきもの。しかもPublic Domain。さらに100%公費でやっている。なので、原則無償公開するのは当然と思っている。
      • ただ、「電子データを作る仕事をもう少し褒めてほしい」。これは相田先生がよく言われる。自分自身は機械作業の担当なのでそこまで思いは強くないが、相田先生は高度な同定作業をされている。他の人文学研究に比べるとやや低く見られているという思いがあるようだ。
    • 最後に一言。
      • 出版社が永久に続く独占権を求めるという事例自体は18世紀からあった。版面権を持っている者と、海賊版を出す者のせめぎあい。当時のイギリスの最高裁では、永久コピーライトを認める方向に行きかけていた。
      • その時、カムデンという元大法官が「科学と学問は公共のものであって、空気や水のように自由で普遍的であるべきだ」といった趣旨の大演説を打って、流れをひっくり返した*31。この思想は、学術情報コンテンツの本質的なもの。
  • 永崎先生
    • DB自体の紹介と、電子データを作る仕事への評価についてお話しいただいた。
    • SAT大正新脩大蔵経テキストデータベースと似たプロジェクトでもある。
    • やっているのは、編集著作物をより正確にDB化すること。「より正確に」ということをしようと思うと、たとえば異体字の処理のように専門性が必要になる。プロジェクトでは、異体字UNICODEに提案することまでやっている。
    • その専門性は創作性と呼べるのか。通常の枠組みで創作性とは言えないが、編集著作権として認められるかもしれない「何か」。
    • 学術研究においても、デジタルヒューマニティーズを評価する枠を作ろうという動きがある。
    • 続いて、ボーンデジタルのWeb上の学術コンテンツの取り組みについて、ミュラー先生からお話いただく。
  • A.チャールズ・ミュラー先生*32(A. Charles Muller,東京大学
    • 自分はアメリカのニューヨーク出身。東京には20年在住。
    • 自分の運営するDigital Dictionary of Buddhism(電子仏教辞典)について話す。
      • このプロジェクトは、ボーンデジタルの辞書を研究者グループで作ろうという試み。
        • 歴史はかなり長く、30年間にわたる。その活動の中で、技術的なこと、ワークフロー、著作権などの色々の問題に向き合ってきた。
        • 学生の頃、自分は中国古典を専攻していたが、辞書がなくて困った。そこで1985年から、自分で単語を入力していた。
        • 1995年になってインターネットが登場。それを見て、他の研究者と協力して、私の入力したデータの質を向上していくことを考え付いた。当時クラウドソーシングという言葉はなかったが、それと同じアイディア。
        • 仏教の漢語が読める辞典を作ろうとした。
        • 1995-1997年あたりでインターネットが普及した時、皆同じようなものを作ると思ったが、そうでもなかった。個人のウェブサイトで辞典のようなものを作ったケースはあったが、現在はほとんどなくなっている。
    • 現在Web上の辞典はたくさんあるが、既存の辞典をWebに移したものばかり。WikipediaGoogleくらい。研究者が作っているものがない。
    • AIという言葉とシステムを作ったJanon Lanierという人物がいる。インターネットのビジョンを持っている人で、Web2.0の批判者でもある。その人が2010年の国際デジタルヒューマニティーズ学会で、こういう批判をした*33
      • 2000年以降、色々な学問的Reference Siteができた。これらをカウントして追跡したところ、GoogleWikipediaができてからその数が減っている。
      • なぜ皆自分の分野の辞書を作らないのか。GoogleWikipediaに負けている。GoogleWikipediaも良いものだが、研究者向けではない。研究者として責任を取って作るべきだと主張。
      • これを聞いた自分は「私は作っている!」と嬉しかった。
    • 電子仏教辞典について*34
      • 現在61,000のエントリーがある。
      • 多くの研究者が協力。1995年に始めた頃は協力者が少なかった。2003年にデータが充分正しくなった頃に、仏教や東アジア思想の研究者が使うようになった。
      • 現在はアメリカで仏教研究を学ぶ時に、授業で最初に紹介される。有名な大学が40校以上登録。
      • 枠組みは簡単なもの。XMLExcelと、簡単なParlの検索エンジン。リソースは割合少ない。
    • 作成に携わる研究者は、初めは自分一人だった。今は70人以上が協力してくれている。
      • サイト上の「Collaborators and Contributors」で、誰が何についてどこまで貢献したか示している。Content Collaborators1は大きいデータ*35、Content Contributors2は小さいデータ、Technical Development and Supportは技術的な貢献。
      • 同じページで、項目を書く人の紹介。その人がどんなエントリーを出したか。XMLには各項目の責任者名が載っている。
      • GoogleWikipediaと違い、学問的なものは責任(Credit)を見せなければならない。でないと人が協力しない。
    • 協力者70名がどうやって集まったか。
      • 協力してくださいと言ったら手を挙げてくれた、というのではない。そういう人は5%くらい。ほとんどはContributors。
      • 1995〜2001年の間は、誰でも自由に使えるようにしていた。利用者が増えても運用は自分一人、サーバのお金やメンテナンスの時間はすべて負担。
      • そこでパスワードによる認証システムを作った。一般ユーザは利用回数に制限、いつでも使える人はContributorだけ。
      • そういうシステムに変えた時には、反発や文句が出た。
      • 文学研究者は協力の意味が分かっていない。協力しないと使えない、というのを徹底した。昔からの友人が頼んできても駄目。
      • それを貫いているうちに協力という文化が皆に分かってきた。データを出せばこの有益なDBが使える!ということで、協力してくれるように。DBの規模が拡大し、データの質が向上した。
      • 現在は毎日電子メールをチェックして、送られてきたデータをDBに入れるのに2時間くらいかかる。
    • 研究者でなく、データ提供に協力できない人には費用を出してもらう。図書館も。年間300ドル。儲けるためではなく、プロジェクトに参加しているという責任を感じてもらうため。そのお金で大学院生を雇ってデータを入力している。
    • 最後に、「恕」。論語では思いやり。誰かが私のために何かしている、私も何かした方がいいという感情。Reciprocity(相互関係)。
    • 現在までこれでやってきた。これからもますます良くなるだろう。Guestでも一日10回まで利用可能。是非見てみてください。
  • 永崎先生
    • 研究者が自分で学術情報流通システムを作って、しかもうまく回っているという例。こうした例はあまりない。貴重な機会。
    • 2例とも、Web上でいかに学術情報を作って維持するかというもの。前者は公金で、後者は個人で運営されている。
    • クリエイティブコモンズ(CC)の枠組みではこういうシステムが議論されている。CCだけで何とかなるのか、事例に即してコメントをお願いします。
  • 岡村さん
    • ミュラー先生のお話で思い浮かんだのは、CCよりもGNU*36の考え方。Linuxなど、コピーライトではなく、コピーレフト。使い続けるにはパブリックにすることが条件というもの。
    • 他方、バークレーのようなライセンスはうまくいかなかった*37。こちらはアカデミックの枠組みで、社会運動的なもの。そういう考え方が取りいれられていることに感銘。
    • 著作権のうちでもお金のかかる部分は、どこかで止めて社会に還元しなくてはならない。そうなっても人格権はずっと続いていく。公開すること自体の保護はどこかで切らなくてはならない。
    • 独立宣言当時は短かった著作権保護期間が、どんどん伸びている。著作権者の中には「孫子の代まで続けてほしい」なんて言っている人もいる。
    • 現在の文化は、先代の文化に乗っかって成立している。保護と利用のバランスが必要。
  • 永崎先生
    • 情報共有のエコシステムは、これまで出版社の集金能力に頼ってきた。出版社を保護することでこのまま頼り続けるのか、頼らずにやっていくのか。
    • アメリカでは、特に人文系研究者が自ら学術情報をアップする動きがある。考え方が変わってきている。
  • 安岡先生
    • 私もDBを作っている立場なので、DBを作る人をもっと大事にして欲しいと思う。著作権はないし、データを公開すればGoogle等に持って行かれるというのは残念。
    • それでもうちしか持っていないものは、データを出さないと誰も見ない。使いにくいという文句も来るが、見てくれているということ。そういう視点からも、NDLのデジタル化事業自体は好ましい。
    • ただ、それにしても著作権の扱いが難しすぎる。ややこしすぎて、近代の出版物には手を出せないという現状がある。
  • 山田先生
    • 今日のシンポジウムの目的は、近デジ大蔵経問題を受けてのこと。すっきりしない部分がいくつか残る。
    • 南伝は翻訳者がはっきりしている、翻訳者に権利がありそう。
      • 1.NDLはちゃんと権利処理をしているのか?
      • 2.大正新脩大蔵経オンデマンド版は権利処理をしているのか?
      • 3.仮に著作者が生きていたとして、NDLデジタル化資料のような形で利用されることを拒否するだろうか?研究者としては、新しい媒体で成果が広く利用されることは歓迎するのではないか?
    • 何しろ憶測の部分が多すぎて、結論づけるのは難しい。
  • 永崎先生
    • 1.NDLからはそのうち詳しい説明が出るだろう。団体著作物、あるいは職務著作物の扱いにしているかどうかという点は次への課題。
    • 2.ここまでの議論を見る限り、大蔵出版はすべて版面権があるという態度のように見える。個々の著作権者に印税を払っているのか、処理はどうしているのか。
    • 3.今回のシンポの大事な点。
      • 著作物はお金に結び付けなくてもいい。大正新脩大蔵経に関わった人たちは、大体が人文系研究者かお坊さん。研究者は成果を公開されることでポスト獲得につながり、生涯賃金という形で見返りがある。お坊さんは、教えを広く伝えられるなら無償でもいいという人もいる。
      • 学術情報それ自体が有償でなくても、著者には対価が得られるということもあり得る。オープンアクセスともつながる考え方。
  • 壇さん
    • 仏教関係の人は、違う名前で著作を書いている場合も多い。そういう人のケースをひとつひとつチェックすることになる。旧著作権法で発表後30年かもしれない、50年かもしれない。複雑な作業。
    • ビジネスや文化の発展に関わる大事な法律なのに、著作権法は使いにくい。しかも最近は文化庁どころか議員立法で法改正が行われたりする。
    • NDLの与えられた立場は、その使いにくい著作権法の中でも権利制限を設ける特別なもの。委縮せずにやってほしい。
  • 山田先生
    • NDLには、法的に可能なことはやってほしい。自分から放棄しないでほしい。
  • 岡村さん
    • 著作権法が複雑というのは本当。弁護士でも何割が正確に理解しているか。ネットで専門家を自称している人でも解っていないケースがある。
    • 法としてのフレームワークがもう駄目。昔はプロユースだったので良かった。今のように、誰でも情報発信する時代においては、法としてもう死んでいると言ってよい。
  • 永崎先生
    • 色々小ネタも用意していたが、時間がなくなった。次回やることがあったら是非。

 以下、xiao-2の感想(もう眠いので適当)。
 午後の部で自分が一番感銘を受けたのは、ミュラー先生のお話。学術情報コンテンツDBを一番よく使うのはコンテンツ生産者でもある、ならば「使いたければ作る側にも回りなさい」という方針を、システムで実装してしまうというのは目から鱗の解決策だった。相互扶助は理念で説いてもなかなか回らない。オープン化に一見反するような方針を取ることで、かえってDBを支えるコミュニティがうまく運用されていくというのは興味深い成果だった。
 一方でそういうコミュニティを設定しない場合、そのリソースを担うのは誰かと言えば、やはり公金に頼ることになる。古事類苑DBが100%公的機関の公金で支えられていることと呼応する、ように思う。
 また、登壇された弁護士さんたちが、口をそろえて法律としての著作権法の限界を訴えていたのも印象に残った。法律の専門家にとっても、やはり厄介なものは厄介なのだなぁ。

*1:この部分は第一部の冒頭と内容が重複するので、その1の方にまとめておいた。

*2:壇弁護士の事務室

*3:著作権法2条1項1号 「一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」

*4:著作権法12条「編集物でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。」

*5:著作権法11条「二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」

*6:著作権法2条12項「共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。」

*7:著作権法15条 法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」

*8:著作権法61条「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。」

*9:著作権法61条2項 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」

*10:xiao-2注:制限事由により許されている行為

*11:著作権法30条著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。」

*12:著作権法31条国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるものにおいては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料を用いて著作物を複製することができる。」

*13:著作権法51条2項「著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。」

*14:著作権法52条1項 「無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年を経過するまでの間、存続する。」

*15:著作権法52条2項1号「変名の著作物における著作者の変名がその者のものとして周知のものであるとき。 」

*16:判例(PDF)

*17:著作権法51条2項 部分「共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。」

*18:著作権法64条「共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意によらなければ、行使することができない。」

*19:著作権法3条「発行又は興行したる著作物の著作権は著作者の生存間及其の死後三十年間継続す」

*20:著作権法1条「文書演述図画建築彫刻模型写真演奏歌唱其の他文芸学術若は美術(音楽を含む以下之に同じ)の範囲に属する著作物の著作者は其の著作物を複製するの権利を専有す」

*21:岡村久道HOME PAGE

*22:なおこの方のパートではスライドの図を示しながらのお話が多く、その場では解りやすかったのだが、後で自分のメモを見たらすっかすかだった。そのためレポートにまとめる段になってどうもうまく繋がらない部分があるが、話者ではなくxiao-2のせい。

*23:Internet Archive

*24:ウェブ魚拓

*25:Genii 学術コンテンツ・ポータル

*26:

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

*27:電子化古事類苑プロジェクト

*28:Wikipedia|古事類苑

*29:たとえばこんな状態。古事類苑 植物部 2・金石部 51

*30:もっとたくさん挙げておられたが割愛。レファレンス協同DBのこの事例でも見るといいよ。「『古事類苑』の内容を検索したい。

*31:出典はこの本らしい。読んでみようっと。

〈海賊版〉の思想‐18世紀英国の永久コピーライト闘争

〈海賊版〉の思想‐18世紀英国の永久コピーライト闘争

*32:Resources for East Asian Language and Thought

*33:出典を探したかったが、xiao-2の語学力にはハードルが高くて諦めた。学会のホームページがあったので、頑張ればどこかにあるかもしれない。DH2010

*34:詳しい説明はこちら。仏教学のディジタル辞書

*35:「大口の」の意味かもしれないが、一応ご本人の言葉通りにしておく

*36:Wikipedia|GNU

*37:Wikipedia|BSDライセンス