図書館機能があるけど、図書館じゃないもの?
不思議な公募を見つけた。
もと淀川区役所・もと淀川区保健福祉センター跡地に関する調査検討業務委託にかかる公募型プロポーザルを実施します
http://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/page/0000247165.html
(以下、HPより引用)
大阪市では、「もと淀川区役所・もと淀川区保健福祉センター跡地」の売却を予定しています。
本業務は、本市の厳しい財政状況の中で、将来のまちづくりを見据えたうえで、本市にとってより有用かつ納得性の高いもと淀川区役所・もと淀川区保健福祉センター跡地の処分に向け、民間の知恵・活力を最大限に活用し区民にとって有益な公共スペース(図書館機能)を備えた施設を整備、運営するため、規模、内容、事業手法等について多角的に調査検討を行うものです。
つまり、区の所有する土地に図書館機能を持つ施設を作るにあたり、案を公募するというものらしい。場所は阪急十三駅の近く。神戸線と京都線が交わる交通の要所だ*1。
仕様書等を読んでみると、「図書館」ではなく、「公共スペース(図書館機能)を備えた施設」と言っている。ちょっと不思議な名称だ。平成25年度の区政議会での議論*2を見ると、図書館が欲しいという意見の他、商業施設や子育てセンターにしてほしいという意見も出ていたようなので、図書館だけでなく、そういった機能をすべて実現したいという意図だろうか。しかし、それにしては図書館以外の機能は特に仕様に挙げられていない。
首をひねりながら仕様書の「検討の前提条件」を見ると、こんな項目があった。
(4) 図書館法に基づく図書館であることを前提としないこと
これなら、さきの不思議な名称の理由が分かる。図書館法*3に基づく前提ではないから、「図書館」としない、ということだろう。
図書館関係の公募で図書館法の遵守が条件として求められるケースはよく見るが、基づかないことをわざわざ自治体側が前提として明記するのは珍しい。「図書館法に基づく図書館」になることによる制限に、とらわれない提案をしてほしいということだろうか。
では「図書館法に基づく図書館」だとどんな制限があるのだろう?
というわけで、慣れない法律をちょっと読んでみた*4。結果として、以下の2種類がありそうだ*5。
- 図書館自体への制限
図書館法は、図書館の役割、置かれるべき人、運営のしかた等について一定の決まりごとを定めている。たとえば第三条では「図書館奉仕」として図書館のなすべきことが規定されている。淀川区の公募では、これにとらわれない自由な発想を求めているということかもしれない。ただ「図書館機能」はやはり求められている訳だが、ホームページに掲載されている質問事項及び回答*6などを参考にする限り、業務の解釈は提案者に委ねられているようだ。
あるいは、入館料を徴収する(第十七条で禁止されている*7)施設にするといった方向もあり得る。
- 関連する他の法規に規制される機関/行為への制限
昨年、こんなニュースがあった。
パチンコ店予定地隣に図書館 東京地裁、国分寺市に賠償命令 (2013/7/20付 日本経済新聞)
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律*8では、特定の種類の営業について、学校や図書館等の周囲200メートルでの営業を禁止している。また振動規制法*9では、やはり図書館の周囲80メートルの区域で、ある種の工事に規制がかかるようだ。いずれも、図書館とは「(図書館法 (昭和二十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定するもの」と定義されている。
実際どのように適用されるかは素人なのでよく分からないが、たとえば図書館建設予定地の近くに、どうしても振動の発生する工事をやらなければならない場所があるとしたら、図書館法に基づく図書館を作ることで工事が制限されることになってしまう。そういう事情があっての配慮とも考えられる。
公募の選定結果は、1月27日に出るそうだ。どんな提案が出てくるのだろう。住民ではないが、注目。
*4:このサイトが超便利。法令データ提供システム
*5:ちなみに図書館法が適用されることのメリットの方は、以前よそのブログ「ささくれ:図書館法が適用されることのメリット」で述べられていた。
*7:公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない
*8:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第二十八条