図書館総合展に行ってきた。〜図書館政策フォーラム「東日本大震災からの復興と震災への備えに向けて」第2部「受援・支援を振り返る」

 図書館政策フォーラム、第2部。毎度ながら抜け漏れ・誤解はご容赦。敬称は「さん」に統一。→以下は自分の感想および妄想。ちゃんとした記録を見たい方は公式レポートを見るべし。

図書館政策フォーラム「東日本大震災からの復興と震災への備えに向けて」【第2部】
公式レポート

  • 白河市立図書館 新出さん
    • 自己紹介と、報告の趣旨説明
      • 2011年3月まで静岡県立図書館に勤務していた。4月に新図書館ができることになり、福島県白河市立図書館に移った。
      • 従って自分自身は被災していない。一方で支援活動にもあまり関わっていない。支援も受援も語るのは難しい。
      • 被災はしていないが被災地にいるという、独特の立ち位置。そういうところからの発言を求められていると理解している。
      • 本日は、被災地における支援活動を主体別に紹介する。ただし、自分が直接支援者にインタビューして話している訳ではない。受援者に対しては直接インタビューした部分もあるが、事情は地域により多様。また、自分が公共図書館の人間なので、どうしても公共図書館支援が話題の中心になってしまう。そういう偏りがあるということはご承知願いたい。
    • 公的機関の支援
      • 文部科学省。公立社会教育施設災害復旧事業*1という枠組みで、施設復旧の費用の3/2までを国が補助。またポータルサイト*2を開設して情報提供や支援のマッチングを図った。
      • 国立国会図書館。資料提供、レファレンス。関係文献の作成*3。また図書館関係の情報を発信するサイト「カレントアウェアネス・ポータル*4」で、関連ニュースに「災害」のタグをつけて情報提供。また、資料修復を必要とするところへの職員派遣。
      • 被災地の県立図書館。自館の復旧とのバランスが難しいため、これは割愛。
      • 被災地外の図書館。レファレンスの受付や、県外避難者へのサービス。BMの寄贈等。
      • 遠野文化研究センター。献本活動を実施*5
    • 図書館関係団体による支援
      • 日本図書館協会。HELP-TOSHOKANと題し、直接活動としては気仙沼市図書館への支援、資料修復ボランティアの養成など。また義捐金募集や政府への要望。出版界に対して公衆送信権の時限的制限を働きかけ、被災地に本をFAXやネットで送れるようにした*6
      • 図書館振興財団*7。1億5千万円という大規模な予算。プレハブやBMの寄贈、図書館の要望に基づき資料装備。
      • 国学図書館協議会。資料寄贈など。
    • 公益法人NPOなどによる支援
      • シャンティ国際ボランティア会*8。早い段階から精力的に動いていた。
      • 日本ユニセフ協会。絵本、児童書、紙芝居の寄贈を募り、セットで送る「ちっちゃな図書館」プロジェクト*9
    • 企業による支援
      • <大震災>出版対策本部*10による図書寄贈プロジェクト*11。これは避難所や学校図書館が中心。
      • その他個別企業からも、ブックトラックや資料等の寄贈。社名を出さずにやっているところもある。
    • その他の団体による支援
      • SaveMLAK*12。インターネット上での情報支援。
      • プロジェクトNext-L南三陸町へのシステム無償提供。
      • その他、本を送ったりBMを回しているところは多い。
    • 受援者側から見たコメント。
      • ここまで取り上げてきた活動について、受援者側からのヒアリングに基づきコメントしていく。支援を受ける側は不満があっても言いにくい。あえて率直に言わせていただく。
      • 文科省による補助は、施設の「復旧」のためのもの。建物を修復して再使用できる場合はいい。問題は、建物自体が流されたり損傷がひどくて根本的に使えない場合。新しくプレハブを建てるための費用は補助の対象とならない。
      • 日本図書館協会による気仙沼市図書館の直接支援について、意見が色々出ている。いち支援団体として直接活動を行うのでなく、業界団体としてコーディネーターや情報発信者、支援のとりまとめ窓口としての役割を果たしてほしかったという声もある。
      • 図書館振興財団については、予算がもらえたのはありがたい、しかし配分に偏りがあるという意見もある。財団側だけの責任とも言い難いが、声を上げられたところにしかお金がいかない。図書館員自体がいなくなってしまったようなところでは、そもそも図書館活動再開のために何が必要なのか分かる人がいない。声を上げにくく、届きにくい。
      • 物的支援について。受援者が必要としている物品の支援は評価されている。しかし、それは何が必要か分かっていて要求できる人が現地にいる場合。我慢してしまったところも多いのではないか。
      • 資料の寄贈について。これはマイナス面が多かった。問合せの電話がたくさんかかってきて、断るのでも大変。もっと困るのは事前連絡なしに、突然送りつけられるケース。整理する人手もなく、災害対策本部に山積みされていたりする。
      • 資料の寄贈が役に立つのは、やはり図書館側からの要望に基づいて送られる場合。支援者と受援者の間にワンクッション、中間団体が入ってヒアリングをする必要がある。役立つのは古本でなく新刊、読み物よりも実用書。
      • 避難所への資料寄贈はケースバイケース。役に立つところもあれば、積まれたまま放置されてしまうところもある。
      • 図書館にはどういうものが必要なのか、理解されていない。日本図書館協会がアピールしていく必要がある。災害時だけでなく、平時から。
      • 人的支援について。復旧の過程ではただ人手があればよいという時期もあるが、本を書架に戻す作業ひとつとっても図書館員がやった方が効率的。
      • うまくいったケースとしては、北海道石狩市から宮城県名取市への支援*13
      • 中長期的な支援が必要。県立図書館に、他県の司書が派遣されるなど。公的な派遣であることが肝要。
      • 直接サービスの実施について。これもケースバイケース。避難所での読み聞かせ等も、喜ばれる場合もあればそれどころではない場合もある。NPOは柔軟さが持ち前。そういったところと連携していく必要がある。
      • 情報支援。これは受援者でなく支援する側への情報。
    • 問題提起
      • マッチングの可能性。受援者のニーズをどう吸い上げるか。図書館内で無理なら、外部の力を借りるべき。
      • 支援がバラバラに行われる。県立図書館は市町村図書館のヒアリングを行い、ニーズを把握している。それを対策本部が吸い上げる。
      • 今後まちの復興計画の中で、図書館に関わる予算が縮小されていくのではないかという不安を抱えるところが多い。復興計画の中に位置づけていく必要がある。

→新さんのお話は、とても明快で分かりやすい。Librahack事件の時もそうだった。支援のあり方についての問題点を指摘するというのは誰にとってもやりにくいものだが、きちんと率直に問題提起されている。しかも指摘される側の方々が同じ壇上にいる状況で、である。気骨のある方だなぁと改めて思う。

  • パネル討議
    • 司会
      • 支援の問題点というのは言いにくい話題。なぜ自分がこれを新さんにお願いしたかというと、2010年に起こったLibrahack事件の際、図書館側として発言してくれた*14ことから信頼している人物であるため。支援・受援両方の温度感を知って、フェアに情報をまとめてくれると考えた。
      • 支援のタイミングは難しい。SaveMLAKの活動にも、当初は「人の生き死にがかかっているときに文化だなんて…」という批判があった。
      • 資料寄贈の問題。自分も支援活動に関わっているので、よく相談が来る。かえって現地の負担になる場合がほとんどなので断っている。だが、断るというのも難しい。受援者からは、それは困るとは言いにくい。
      • 自治体間での職員派遣。対口支援(たいこうしえん)という考え方がある*15。遠隔地の自治体同士で同盟関係を結び、災害時に支援しあうもの。今回の被災地だと名取市と、神戸市・石狩市などでこの仕組みが働いていた。
      • 受援者の疲弊を防ぐことが必要。これは難しい問題。企業関係での動きも様々なものがあったが、どれも個別に動いていた。出版対策本部ができて出版界が一本化したことは、かつて出版に携わっていた自分から見ると画期的なこと。図書館業界における災害対策本部が必要。
      • 支援に手を上げられない受援者の存在。
      • 支援と受援のマッチングも難しい。むしろうまくいく方が珍しいくらい。図書館は限定された職能であるから、比較的マッチングしやすいのでは。
      • 図書館におけるBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)*16の必要性。災害・テロ等の発生時、どのように企業活動を維持していくかの計画。つまり危機管理。図書館の危機管理*17というと不審者対策等が中心で、図書館事業をいかに進めていくかという視点があまりなかった。
  • 受援者側からのコメント
    • 司会
      • さきほど紹介された支援の取り組みについて、被災地の図書館、特に支援者でもあり、受援者でもある県立図書館の立場から本音で意見を聞きたい。
    • 菊池さん
      • 資料寄贈について。災害直後から、寄贈の申し出はたくさんいただいている。県立図書館のホームページに、県内市町村図書館だけが見られるサイトがあるので、そこにまとめて掲載している。だが申し出に対して「この本がほしい」という声はあまり出ないのが実情。
      • 一方、本を送る側は思い入れがある。「この本は他の本とは違って特別なので、必ず届けてほしい」と言われたりする。お断りすると気分を害される場合もあり、難しい。
      • 県立図書館でそれらの集約の難しい部分を、遠野文化研究センターがやってくれている。全国レベルでの寄贈の窓口があればいいのかもしれない。
      • 職員派遣について。ボランティアの人手は多いが、専門職の人は少ない。図書館をコーディネートできる人材が大事。県立図書館が市町村の図書館を訪問して回るのも、直接何かを手伝うというよりはアドバイスの部分が大きい。
    • 熊谷さん
      • 資料寄贈の電話は、うちでもだいぶ多かった。だが宮城県の場合、津波でまったく本が使えなくなっているところはあまりない。全体的にたくさんの本を寄贈されるよりも、受け取る側からピンポイントで必要な本を指定できる方がよい。
      • だが、その「必要な本」を把握するには数か月かかる。県立図書館では、貸し出していて被災した資料の所在について一年間の猶予期間を設けている。一年間見つからなければ除籍。所在確認には最低そのくらいかかる。1か月くらいでは判断できない。
      • コーディネータが必要という意見には全面的に同意。作業したいというボランティアはいるが、とりまとめる人がいない。ひとつの図書館に一人、10館なら10人そういう人が必要。県立図書館では、それだけの人を出すのはとうてい無理。
      • 被災地での図書館活動は、民間も含め色々な団体によって行われている。連携したいが、うまくできていない。
    • 吉田さん
      • 中間支援施設の必要性。今回の震災が阪神大震災と違うのは、情報の速さも量も非常に多いこと。
      • たとえば支援の申し出が県立図書館だけに来るならまとめようがある。実際は教育委員会、災害対策本部等、色々なレイヤーで申し出が寄せられ、集約されないまま県立図書館に下りてくる。結局再度調整するのは県立図書館。情報をとても捌ききれない。いったんフィルタをかける必要がある。
      • 受援側の役割分担も重要。県立図書館、県の教育委員会、それぞれ得手不得手がある。支援の申し出は子ども向けなど、学校関係のものが多かった。そういうものは県立図書館よりも教育委員会の方が得意。
      • ただ、3月時点では被災者は図書どころではなかった。避難所に、誰かが持ち寄ったりして本のコーナーができることはあった。だが図書館と呼べるようなものではない。みんな自分の生活に必死。
      • とは言え、子どもについては話は別かもしれない。子どもには本の存在が安らぎになるだろう。
    • 司会
      • 受援者側の本音を引き出すのは難しい。特に公の場では。支援者の側も、時として凶暴になる。支援を断ると罵られたりする。相手側の気持ちをうまく受け止める必要がある。
    • 司会
      • 新さんのコメントに対して、支援者側の団体の方から何かコメントは。
    • 日本図書館協会 西野一夫さん
      • 日本図書館協会災害対策委員の一員として発言する。なぜ気仙沼市に直接支援に出向いたのかという意見だが、これは流れによるもの。NHKニュース等で被災状況を取り上げていたりして、情報がよく入っていたからというのが一点。また気仙沼市というのは図書館活動の歴史もあり、東北でも非常に評価の高い図書館であるため。出向いたのは、やはりまず現地を見なくてはいけないという思いから。
      • いくつかの図書館にコンタクトしたが、4月から館長交代などで連絡を取れないところが多かった。気仙沼市は連絡が取れた上、3月中に開館したいという意向が先方にあった。SaveMLAKの活動が気仙沼に拠点を置いていたこともある。
      • 日本図書館協会は、阪神や新潟中越の震災でもうまく支援ができなかった。気仙沼は情報発信力が高い。我々自身が支援ノウハウを学ぶという意味もある。県立図書館から見ると違和感があるのかもしれないが、今後2期3期と活動を続ける中で、このノウハウを活かしていきたい。市の教育委員会からも、気仙沼市の図書館を市の復興の中心と位置づけると言ってもらえた。
      • 支援の間口は広い。どう継続していくべきか、総括中。
    • 司会
      • 支援側と受援側で、率直にこういうやりとりをできるのがよい。日本図書館協会をうまくビークル(乗り物)として活用していくのがよい。
    • 国立国会図書館 奥山裕之さん
      • 会議やシンポジウムの意義について。まとめまで行きづらいという岡本さんのご指摘は確かに当たっている。が、まとめに至らなくても気付きや学びはある。たとえば寄贈図書の問題が焙りだされたり、どのプレーヤーがどう支援に参加しているかということが見えてくる。初めのレベルは高くなくても、ステップアップの可能性はある。ただ、その都度被災地の県立図書館の人に来てもらうというのは心苦しいところだが。
      • 専門性のある支援について。資料保存については、国会図書館で研修等を行っている。今後はビジネス支援的なものが必要になるか。
      • 県立図書館の意義について。国会図書館から見ると、国会図書館と県立図書館とのつながりを軸にしてやってこられた。県立図書館の存在はありがたい。一方で、それが県立図書館側にとっては負担になる面もある。今後の政策的な意味としては、県立図書館の人員増強の必要性か。
    • 司会
      • 関係者が顔を合わせるだけでも意味があるともいえる。
    • 図書館振興財団*18 石川徹也さん*19
      • 手を上げられない所への支援、支援なき支援にどう対応するかについて。財団の支援活動があまり知られていなかったのが、うまく浸透しなかった理由か。まったく報道されなかったし、国会図書館日本図書館協会も取り上げてくれなかった。広報のやり方が不十分だったと言え、反省点。
      • 報道のあり方については納得のいかない部分がある。とある市で、財団から図書館再開のためのプレハブを寄付した。しかしそのプレハブを使わず、企業からの支援で建物を作って図書館サービスを再開することになった。現地を見に行ったところ、確かにプレハブではない木造の小屋が建っていた。だが場所は土砂災害の危険のある崖下で、人の住んでいるところからも遠くて行きにくいところ。そういう状況を見ずに、報道では「○○社の支援で図書館を建てた」と報じている。
      • フォーラムのテーマ「未来への反省」について。吉田家文書の話が出ていたが、たとえばこうした地域資料をデジタル化するというのも未来に向けての取り組み。その意味では、平時から考えるべきこと。
    • 司会
      • 報道については、図書館関係のことが報道されるだけでもマシという気もする。当初は人の生命がかかっている中で、文化財の話をすること自体がタブー視されるような空気があった。
      • 一方で図書館というのは文化行政の分かりやすい復興の象徴でもあり、報じられる機会はある。関係者側の発信力を上げていくことと、報道する記者の側の理解度を上げていく「記者教育」の両方が必要。
      • 発信力という点では、カレントアウェアネス・ポータルのような情報基盤が日本図書館協会にもあるべきだと思う。現地の人にインタビュー等をしても、発信する基盤がない。
    • saveMLAK 江草由佳さん
      • ここまでの流れと少し離れるが、図書館支援といったときに公共図書館のみが対象とされるように見えてしまっている。大学図書館専門図書館、公民館も、一般の人にとっては図書館のはず。「このフォーラムでは」公共図書館を取り上げる、という趣旨でもいいが、大学等の図書館が注目されていないように見えてしまうのは問題。実際に支援の必要な人が「自分は無視されていない」と安心できることが必要。
      • 中間団体の必要性。自分も経験したが、図書館活動を再開した途端に一日何十件も資料寄贈の申し出の電話がある。それを断るだけでも辛い。専門的な支援団体が欲しい。saveMLAKでやりますと言えるといいが、この活動は個人によるボランティア。皆仕事を持ちながら、片手間でやっている。そうではなく、常に電話対応できる人を雇えるくらいの基盤が要る。逆に、そういう形でやっていないから活動が認められないという面もある。
    • 司会
      • 薄ぼんやり周りにいる人が「忘れていないよ」という思いを伝えることができるとよい。図書館支援というと公共図書館が中心になりがちだが、本来の趣旨は「その地域の人にとって情報アクセスの手段となっていたもの」の支援。その意味ではたとえば民間企業や、その他の業種でもよい。
    • 司会
      • 政策という観点から。支援機関同士の連携の重要性、中間団体の必要性が話題に出ていた。そういった中間団体を全国的に作れないのかという話もある。だが、その役割を日本図書館協会にだけ期待するのは難しい。
      • 理由その1。日本図書館協会の支援は、どうしても公共図書館に偏りがちであること。
      • 理由その2。そもそも日本図書館協会自体が仮想的組織に近い。確かに資金規模は大きいし建物もあるが、実は組織の規模は自治体の図書館と変わらないレベル。ボランタリーな職能団体と考えた方がよい。何でも日本図書館協会にやってもらうというのは思考停止。
    • 西野さん
      • 支援に向けて、日本図書館協会と県立図書館との会議や連絡会を行った。休止していたメーリングリストも再開し、連絡体制ができてきている。震災への対策委員会はあるが、担当者の数は4名くらい。一方で義捐金も集まってきている。
      • 図書館復興支援に向けて政策的提言をしていくとか、平時からの図書館の災害時体制をどうするかとりまとめるといったことが、日本図書館協会としてなすべきことかもしれない。
    • 司会
      • 日本図書館協会をうまくビークルとして使っていく必要がある。日本図書館協会という看板への信頼はやはり高く、資金を集める上では有効。
      • この目的に関しては、支援関係者が図書館協会の災害対策委員会に加われるようにするとよいと思われる。他の図書館等の組織に属している人も、個人的な取り組みと異なり、日本図書館協会であればオーソライズされた形で参加しやすい。様々な組織の人の、開かれたボランティアネットワークにしていく可能性は。
    • 西野さん
      • 現在義捐金が1,500万円ほど集まっている。今後支援活動を続けていくには、日本図書館協会単独で何かやるのは難しい。他機関と一緒にやれればありがたい。
    • 新さん
      • 原発警戒区域内の図書館の人にも話を聞いた。原発周辺は復旧がまったく手つかずであることを認識してほしい。どういう支援が必要になるか分からない。
      • ようやく文化財のサルベージが始まっている。地域資料を県立図書館で保存するとか、地元の情報のクリッピング等の取り組み等、やれることからやっていってほしい。
    • 司会による第二部のまとめ
      • 1点目は資料寄贈に関する問題。まず、寄贈そのものの可否。次に、全国からの申し出を取りまとめる窓口化の必要性。出版界が出版対策本部のような形でまとまったというのは注目すべきこと。本を無償で送る行為は、やりすぎると出版界を刺激する。また、ピンポイントで図書館側が欲しいものを送るというのも重要な点。寄贈の主体は基本的に個人であり、送る側をコントロールすることはできない。中間に入る存在が必要。
      • 2点目は、受援者と支援者の間の連携。コーディネート機能、中間仲介機能の必要。
      • 3点目は、声なき声への遡及。石川さんが言われていたように、せっかく支援の取り組みがあっても必要な人のところまで情報が届いていない。メディアリレーションの強化と、自前のメディア(図書館メディア)の確立が必要。
      • そして政策課題をまとめると、職員派遣、都道府県立図書館の意義、地域資料のデジタル化の3点。


 以下、ぼやっとxiao-2の感想。

  • 資料寄贈について。

 支援・受援の現場に携わった人たちが、口を揃えて資料寄贈の扱いの難しさに触れていたのが印象に残った。これは別のシンポジウムでも聞いたことがある。普遍的な課題なのだろう。
 本さえあればいい、という訳にはいかない。図書館に必要なのは個々の本でなく全体として構成された蔵書だし、置き場所もシステムも書誌データも、さらには管理する人もあってこその図書館。裏を返すと、図書館における本以外のそういった要素の重要さが一般的に認知されていないということなのだろうか。
 また、西日本のとある図書館に勤める知人の話を思い出した。そこの図書館が窓口になって被災地への資料寄贈のとりまとめを行ったが、最大の懸念は「ゴミ本の処理」だったという。誰も要らないような本を送ってくる人が、残念ながらやはりいるらしい。そういうものを仕分けて処分するのは、平常時でもけっこうな重労働だろう。とりまとめ側の図書館だって日常業務にプラスアルファでそういった活動をやっているわけだ。しかも寄贈の量や内容は事前に分からないから、業務量の見当がつかないというのは、難しいものがある。
 平時から全国的なデポジット・ライブラリー制度が確立していればいいかもしれない。が、それだって誰が運営するのかという問題があるな。

  • 公共以外の図書館について。

 江草さんも指摘されていたが、公共以外の図書館については、こんな感じに問題意識を共有する場が設けられたことがあるんだろうか?それぞれの種類に特有の問題がありそうな気がする。ちょっと想像してみる。
 たとえば大学図書館の場合、被災でサービス休止していると、そこを利用する人達は情報環境が一気に悪くなる。公共図書館が休止していても住民は死なないかもしれないが、図書館の資料もILLも電子ジャーナルもデータベースも使えなくなった先生や学生さんは、学業的な意味では危機に直面するかもしれない(たとえば卒論が書けないとか)。
 あるいは専門図書館の場合。ユニークな資料を持っている機関が多そうなので、資料が駄目になったときの損害は公共図書館とはまた方向が違うだろう。また、少人数が長く担当している場合が多いように思う。建物や資料が無事でも、担当者の身にもしものことがあったら即運営できなくなるかもしれない。
 学校図書館については、福島県立図書館の吉田さんが第一部で少し触れていられた。避難によって起きる図書館規模と生徒数のミスマッチ、などだろうか。

 最後にどうでもいいこと。「受援」という言葉が「えひめ」に見えて仕方ないのは、自分だけでしょうか。

*1:このへんのことか?文部科学省ホームページ:公立学校施設災害復旧事業

*2:子どもの学び支援ポータルサイト

*3:国立国会図書館 東日本大震災復興支援ページ

*4:カレントアウェアネス・ポータル

*5:三陸文化復興プロジェクト 〜献本活動〜

*6:その他の活動内容はこちらにまとまっている。東日本大震災について

*7:図書館振興財団ホームページ

*8:公益社団法人シャンティ国際ボランティア会のホームページ

*9:現在は受付終了。ちっちゃな図書館プロジェクトお詫びとお願いのお知らせ

*10:<大震災>出版対策本部のホームページ

*11:図書寄贈プロジェクト

*12:SaveMLAKホームページ

*13:「 がんばろう、なとり 」-特別号-2011.5.11(PDF)

*14:Librahack事件に関する新さんのご発言については、過去のブログ記事参照。第277回日本図書館研究会 研究例会「岡崎市立図書館Librahack事件から見えてきたもの」に行ってきた。続・第277回日本図書館研究会 研究例会「岡崎市立図書館Librahack事件から見えてきたもの」に行ってきた。

*15:参考大阪市、被災地「対口支援」制度化申し入れ:MSN産経ニュース

*16:Business Continuity Plan:@IT情報マネジメント用語事典

*17:参考:

図書館が危ない!―運営編

図書館が危ない!―運営編

図書館が危ない!―地震災害編

図書館が危ない!―地震災害編

図書以外だと文部科学省図書館におけるリスクマネージメンントガイドブック−トラブルや災害に備えて−

*18:図書館振興財団のホームページ

*19:図書館振興財団の支援内容はこちらを参照。図書館振興財団 東日本大震災支援要請について