人前で話すとき、気にかけることども。

 近々、人前で話をすることになった。久しぶりの上、あまり経験のないタイプの聴衆が相手。
 感覚を取り戻すために、そういえば自分がプレゼンで気にしてきたことって何だっけ?と頭を整理してみる。

  • その1:自分の立つ「場」を知る。

 文章と違ってプレゼンはライブ。話の内容だけでなく、話を乗っける「場」のことを知っておくと、楽になる。

    • どういうイベントか?

 テーマについて詳しく説明する場か、ふわっと分かってもらうだけでいいのか。
 演目が複数あるイベントの場合、自分の前後はどんなプログラムなのか。直前の演目が自分の話すテーマとどんな関係にあるか、関係ないか。前の講師が受けを取っていたら、その人の話題に乗っかるだけで聞いてもらいやすくなる。

    • 聞きに来るのは誰か?

 大人か子どもか。社会人か学生か。自分の話すテーマに詳しい人か素人か、そのテーマのどのへんに興味を持ってくれそうか。
 研修会等で来場者が事前に分かっている場合は、可能なら名簿を事前に見せてもらうとよい。「こういう人が来るなら○○の部分をじっくり話すと喜んでもらえるかもしれない」とか、想像を働かせることができる。働かせたところで役に立たない場合も多いが、何も知らないよりは緊張がましになる。

    • どんな場所で、時間はどのくらいか?

 会場の大きさも大事。基本的に、会場が大きいと反応はゆっくりくる。20-30名の教室みたいな場所ならワッと湧くようなところでも、300名の会場だとコンマ数秒必要だったりする。当然、話しぶりもゆっくりめにする必要がある。
 持ち時間はしっかり把握。オーバーしないのは鉄則。

  • その2:ノイズを除去する。

 伝えたい情報を伝えるためには、伝える必要のない情報をカットする。人間の注意力は限られている。せっかくだから、その注意力をありったけこちらに向けてほしい。

    • 不要な反感を買わない。

 カチンとくる言い回し、というのがある。大体は悪口、揶揄のたぐい。もちろん批判自体が目的の場合は構わないけれど、問題は当人に悪気がなく、単なる比喩などでそういうのが出てくる時。これは聞く側に一瞬緊張が走る。悪口の当事者がいればもちろんいい気持ちはしないし、そうでない人にも「あ、今微妙なことを言ったな」という抵抗が生じる。
 いずれにせよ話の内容に対する注意力が削がれるので、プレゼンとしては「損」だと思う。道義的なことでなく、損得の問題。ただまぁ行き過ぎると言葉狩りになるので微妙なんだけど。

    • 不要な「?」を残さない。

 話の中で「えっ、今の何?」という疑問が残ると、聞き手はそちらに注意力を取られる。
 多いのは専門用語。専門用語を避ける/言いかえるのは一つの手。避けられないなら、軽く説明するのも一つの手。いちいち説明するとうっとうしくなるなら、「○○が、あ、○○というのがありまして、詳しく言いませんが…」と、「なんだか分からないけど、この話に登場するモノ」として位置付けてしまうのも一つの手。
 また、内輪ネタも気をつける。聴衆に知り合いがいたりすると、うっかりすると出てしまう。知らない人の知らない行為をネタにして盛り上がられるほど、初見の人間にとって疎外感を感じるものはない。
 スライドも不要な「?」になりうる。情報豊富なスライドは、初めて見る人はすぐには理解できない。細かい字がいっぱい並んでいたりすると、そもそも画面上で読めないこともある。いま話題にしている情報がスライドのどこにあるか説明してもらえると、安心する。あるいは「この部分は持って帰って読んでくださいね〜」ときっぱりお土産にしてしまうのもあり。

    • 不要な動きをしない。

 緊張すると、手が落ち着かない。髪や顔を触ったり、意味なく動き回りたくなる。でも見る側に回るとこれはマイナス。人の動きというのは、自分が意識している以上に気になるもの。せっかくスライドを見てほしい時に演者が無駄に動くと、そちらに意識がいってしまう。もちろん、話す上でのボディランゲージはまた別。
 ちなみにパネルディスカッションのように複数の演者が壇上に並んでいるパターンで、ひとりのパネリストが話している時に、他のパネリストが関係ない動きをするのも気になる。他の人が話している時は、ちゃんと聞く人になりましょう。ひな壇芸人さんの動きを見習うべし。
 スライドにもこれが当てはまることがある。パワーポイントのアニメーションを多用して文字や画がむやみにウネウネ動くと、その動きの方に気を取られて、メッセージの内容を忘れてしまうことがある。自分はこれが得意じゃないので、アニメーションはあまり使わない。

  • その3:緊張はするもの。

 緊張しない方法があれば知りたいが、残念ながら成功したことはない。ということで、緊張してもなんとか乗り切るための方策。

    • 読み原稿は、読むとおりに作る。

 話し言葉と書き言葉は違う。うっかり論文調で原稿を作ってしまうと、息継ぎする場所がなくて声が裏返ったり(これでますます上がる)、口頭だとえらく高飛車な言い回しに聞こえたりする。そういう原稿を見ながら、その場で話し言葉に翻訳できる能力のある人もいるが、これは熟練者の話。持ち時間を守るためにも、話すとおりの台詞を準備しておくのは大事。

    • 練習は声に出し、身体を動かす。

 話しやすい原稿かどうかは、話してみないと分からない。練習は声に出してやる。大声を出す場所がなければ、ブツブツつぶやいてみるだけでもいい。たいへん怪しい人物ですが。付き合ってくれる友人がいれば、聞いてもらう。お菓子でもご飯でもおごって、拝み倒す。

    • 聴衆を見て、好きになる。

 客席を見るのは勇気がいる。だが、うつむくとn人の聴衆はn×100倍にも思えてくる。
 あえて聴衆を見る。その中から比較的聞いてくれそうな人を選んで、その人にだけ話すつもりで話す。話し手:聞き手=1:nでなく、1:1の関係を仮構すると、気が楽になる。できれば客席の右半分と左半分に1名ずつ、2名にしておくとよい。一人だけ見つめて話すと、さすがに相手がちょっと怖がることもあるからね(笑)


 以上、xiao-2が「気にかけてる」こと。こうやって列挙してみると、うーむ、なかなか実践できてないなぁ。精進精進。