ツイッターノミクス

ツイッターノミクス TwitterNomics

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 オンライン・コミュニティを活用し、楽しむポイント。
 キーワードは「ウッフィー」。オンラインにおけるその人への評価の証、と説明される。好かれる、つながる、一目置かれることによって増える。お金では買えない。お金で買おうとしたことがバレると、減る。
 日本語だと「徳を積む」みたいな感覚かな。そう書いて気付いたが、この考え方、案外論語とかと相性がいいかもしれない。

 ウッフィー・リッチになるための原則。

1.大声でわめくのはやめ、まずは聞くことから始める。
2.コミュニティの一員になり、顧客と信頼関係を築く。
3.わくわくするような体験を創造し、注目を集める。
4.無秩序もよしとし、計画や管理にこだわらない。
5.高い目標を見つける。(p57)

 面白いのは、ウッフィーが増えるのは人に奉仕した時だけではない、ということ。ウッフィーを増やす行為のリストには「頼みごとをする」「アドバイスを求める」「失敗を隠さない」等も入っている。
 以前別な本*1で「ヴァルネラビリティ」という舌噛みそうな言葉を知った。弱みや人間味をあえて見せることで信頼度を上げるというような意味だったが。同じような概念か。

 ただしやりっぱなしではない。頼みごとを聞いてもらえたら感謝する、アドバイスをもらえたら取り入れる、失敗したら素早く対応する、というフィードバックが必要。したがって自分で事前にかっちり計画を決めることはできない。「原則4.」が必要になってくるわけだ。
 一方で、フィードバックを生かすための枠組みはかっちり作っておかないといけない。たとえば、アメリカ議会図書館が写真整理にFlickerを通じて一般の人からのタグ付けを活用した事例が紹介されている(p191)。この時は著作権処理のために「No Known Copyright」という規定を設けたそうだ。現時点で確認されている著作権は存在しない、ただし著作権が切れているという保証もできない、使う時は自己責任でお願いします。というものらしい。画期的だが、こんな新しい規定を設けるのは結構な冒険だ。


 上記のようなことってオンラインコミュニティに限らず、一般的に人に好かれる方法じゃないのという気もする。だからこの本で紹介されている様々の事例は、「感情に訴える」「物語性がある」「楽しい」「ゆきあたりばったり」といった、案外人間臭い要素に則っている。
 実際に顔を突き合わせてのコミュニケーションももちろん重要。そのひとつとして、Barcampという企画が紹介されていた。

Barcampは、参加者が作る討論会とでも言ったらいいだろうか。時間と会場だけが確保されており、参加者は会場に行って自分の話したいテーマをポストイットに書き、ホワイトボードの時間割の空いているところに勝手に貼りつけるという手順。部屋はだいたい三、四室用意されていて、講演または討論は同時進行する。さっきA室で話していた人が次はB室で聞き手に回るといった具合に、参加者は話し手にもなれば聞き手にもなり、全員が討論に加わることを期待される。(p202)

 これは面白そう。参考になる、とメモメモ。


 第4章「ウェブ上で顧客を増やす八つの秘訣」では、具体的な心がけについて、事例を挙げながら説く。曰く「コメントには必ず返事する」「新機能や変更は必ず事前に知らせる」等(p84)。
 ここで自分の頭にGoogleのことが浮かんだ。あんまりこの秘訣に沿ってなくね?と。検索アルゴリズムは謎のままだし、ちょくちょく勝手にサービスが変わるし、一般ユーザが意見を伝えてもめったに返事がないという評判だが。どうやってフィードバックしているのだろう。…と思ったら、数ページ後に言及があった。

グーグルがよく使うのが、ABスプリット・テストという方法である。これは、ページを何通りが用意し、どれが最も好まれるかをユーザの行動から判断するテスト手法だ。このテストを繰り返し、ロゴと検索結果のレイアウトやスポンサー・リンクの表示方法などを微調整して、ページビューの増加につなげている。(p105)

 つまりユーザの行動ログをデータにすることで、正面切って意見を求めなくてもニーズをくみ取ることができていたわけか。そういやあの本にもその手法のことが書いてあった。こりゃナイスと思うか、気持ち悪いと思うかは別として、効果的には違いない。


 ところでこの本、タイトルに反してあまりTwitterのことを中心にはしていない。原題は「THE WHUFFIE FACTOR」。こちらの方が合ってるんじゃないかと思ったが、このタイトルだったらたぶん手には取らなかった。タイトルにツイッターを入れておいた方がキャッチーだろうという恐らくは出版社側の戦略に、うまうまと引っかかった自分である。

 ちなみに解説は津田大介さん。「Twitter社会論」*2を読み直してみようかという気になった。

*1:ちなみにこちら。

地域メディアが地域を変える

地域メディアが地域を変える

*2:

Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)

Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)