書店の未来をデザインする
本の学校・出版産業シンポジウム2007記録集―書店の未来をデザインする
- 作者: 本の学校
- 出版社/メーカー: 唯学書房
- 発売日: 2008/07/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 「売れる本を仕入れることができない」
この悩みが、繰り返し出てくる。書店の人にとって非常に大きな悩みなのだと感じた。
本の流通の仕組みについては、他の本で読んでうっすらとは知っていた。取次というものの存在も。だけど、なんとなく腑に落ちない。
商品がヒットすれば、メーカーさんは売れ時を逃さないうちにバカスカ作って流通ルートに流しまくるのが普通だと思っていた。また商売の世界では消費者が王様で一番強くて、商品を王様に買ってもらうには店に置かないと始まらない。だからメーカーは売ってくれる人を、問屋さんは小売店を大事にするものだと思っていた。
それなのに、消費者が欲しがる本を「売らせてもらえない」というのは、なんだか感覚として違和感がある。でも現実に書店の人はこのことで頭を悩ませているのだということが、ひしひし伝わってくる。どこかにカラクリがあるに違いない。
- 図書館に大事な考え方は、本屋さんでも試されている。本屋さんにはヒントがいっぱい。
商人のサービスの一つに、「わが店に来た客は逃がさない」という「縦のサービス」というものがあります。お客さんが、「この本はないのか」という場合、「ありません」というと機会損失になってしまうので(中略)欠品していたその本をすぐさま仕入れてきて「倉庫から持ってきました」などと涼しい顔をして売る。これが「縦のサービス」です。
「横のサービス」とは何か。それは、隣接する書店同士、在庫を開示し合い、自分のところが欠品していても「近くのここの書店に在庫がありますよ」という情報をお客さんに提供するサービスのことです。
縦のサービスでは、(中略)必要な本が入荷するまでに三週間もかかってしまいます。それでは顧客ニーズにあった十分なサービスとはいえません。その点、横のサービスでは他店の在庫情報を開示するわけですから、お客さんは三週間の入荷を待たずに、在庫のある近くの書店に足を運べばその日のうちに欲しい本を入手することができるのです。(p037)
「草の根分けても…」から、レフェラルサービスへの変化。を読み取るのは考え過ぎか。
売場から得られる情報のなかには、お客様がくださる情報も数多くありました。(中略)私は売場にいるときはできるだけ売場の真ん中に立つようにしています。「わからないことがあれば、どうぞ私に尋ねてください」という顔つきで立つのです。そうすると「こんな雑誌はありますか?」「あの雑誌はどこにありますか?」と、お客様は引っきりなしに質問をしてきます。こうした質問にこそ売上げアップにつながる重要な情報が含まれているのです。(p065)
このお店では、お客さんから得た問い合わせを情報として活かすために、問い合わせノートをつくって共有したそうだ。レファ協だー(色々と、違う)。レジじゃなく、売場。というところが興味深い。
その他、巻末の小技集も色々ためになる。さすが専門家。大分前だけど、よそのブログでこんな記事を読んだのを思い出す。
もちろん書店と図書館は存在の目的が違うのだから、真似すりゃいいってものじゃない。たとえば売りたい本を何十冊も平台に山積みにしてアピール!なんてのは、図書館にはできないし、やらなくていいだろう。では、逆に書店がやりにくいこと、やりたくないことで、図書館ができることは何か。
- 元気なプロジェクトは、しばしば飲み会で生まれる。
「本屋大賞」は、版元と書店員の交流飲み会での話がきっかけになって生まれたらしい。
仕事柄、飲み会で盛り上がる話って、白川さんと同じようにやはり本の話なんですよね。私は文庫の棚を長い間担当しているんですが、自分一人でやっていると、だんだん視点が凝り固まったかたちになってしまいがちなんです。そこで、書店員同士の横のつながりを活用し、新しい意見を採り入れて売り場を盛り上げたい、というのがそもそものきっかけでした。(p118)
ここでも出てくる「横のつながり」。
飲み会ありきの企画なんで、企画のために集まったわけじゃないんです。もともと飲んでいて楽しいメンバーだったから、「このメンバーで何か楽しいことができるんじゃないか」ということで始めたんですよ。(中略)「この飲み会の雰囲気が売り場のほうでお客様に伝わればな」という気持ちはありますね。(p118)
楽しいことやりたい元気な人たちが集まってわいわいしていると、生まれてくるものがある、というのは本当だと思う。酒が飲めないならお茶でもいい。
それにしても、やっぱり図書館員と書店員と出版関係の人はもっと交流すべきだ。東京国際ブックフェア行けばよかった。あぁ。