本屋さんの本。

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

 人からこの本を薦められた。面白そうだけど未入手。
 考えてみると、書店業界のことをあまり知らない。図書館とはいわばお隣の業界なのに、こんなことではいかん。ということで、準備運動に何冊か読んでみる。

本を売る現場でなにが起こっているのか!?

本を売る現場でなにが起こっているのか!?

 本の流通と販売に関わる色々な人のインタビュー。特に色々な書店人へのインタビュー記事は、あちこちにヒントが散りばめられている。特にジュンク堂の人の言葉が図書館的に琴線に触れまくる。

 今、規模の小さな書店さんが潰れていく状況の中で、「大型書店は強い」という印象を持たれる方も多いようですが、小さな書店さんがなくなると大型書店のお客さんが増えるということはほとんどありません。むしろ逆で、小さな書店さんが業界を支えてくれているんです。ご近所の書店さんが活発になればなるほど、逆に「そういえばこんな本も欲しい」と我々のところにお客さんが本を探しにくる。町の書店さんがなくなれば「もう買わなくてもいいや」と思ってしまう。そうなると中々専門書まで探しに来ないのです。(p102)

 大きい図書館と小さい図書館の関係も、本当はこうであるべきだよね。と勝手に納得。

 本と雑貨を一緒に並べた独特の「空間」を売る、ヴィレッジヴァンガードの人の言葉も良い。

 他の書店さんよりも、普段本をあまり読まない方に対して本を提供していこう、という気持ちが強いと思います。「こういう面白い本があるよ」と。そうなると本は新刊でなくとも問題ありません。例え10年前の本であっても、初めて見た方にとって、それは新刊になるわけですから。(p177)


ブックオフ 情熱のマネジメント

ブックオフ 情熱のマネジメント

 本屋さんの書いた本だと、経営を語る中に自ずと「本」に対する思い入れが滲み出ているものだけど、こちらはまったくそれが感じられない。書いた人が経営学の人だからかも知れないが。良くも悪くも、新鮮。
 新古書店というものが、やはり生まれるべくして生まれたんだなあと実感する。本はリサイクルしてもあまり価値が下がらないのに、新品は値引きされない。本を売りたい人は多い。しかも既存の古本屋は汚くて敷居が高いイメージ*1。きれいで誰でも働けて明朗会計の、コンビニ的な店を作ろう…というのは、言われてみればコロンブスの卵的発想だった。
 既存の書店や出版業界からは目の敵にされがちだが、文句を言おうが何しようが、確かに世の中に求められていたシステムであることは事実。
 経営難をようやく乗り越えつつある、という結び方をされていて、オヤッと思った。最近講談社による大量株式取得の話があったけど。よく見ると2004年の本。

ネットは新聞を殺すのか-変貌するマスメディア

ネットは新聞を殺すのか-変貌するマスメディア

 本屋さんとは関係ないけど、ネットvs既存のメディアという構図は通ずるものがあるかしらん、と読んでみた。
 プロの記者に支えられ、情報の信頼性・正確性を重んじるのが新聞。対して、アマチュアや一般の人に支えられ、情報の速さと量で優るのがネット。しかしネットに流れる情報量の増加につれて、コンテンツをうまく編集し、必要な人が探しやすいよう加工する人の役割が重要になっていく。
 結局情報を編集する人の仕事はなくならない。ただ10年後にその役割を担っているのは、現在の新聞記者のような人々とは違う種類の人かも知れない。…ということなのかなぁ。
 これも刊行が2003年なので、現状との差を感じる面もあった。ブログが最先端の情報源のように紹介されているが、今みたいに猫も杓子もブログを書くようになるとまた話が違うかも知れない。


 さて、これでちょっと前に出た本の予習はした。「新世紀メディア論」、ついていけるかなぁ。

*1:自分はいわゆる古本屋大好きだけど、ここはこの本の主張です。