盲目の時計職人

盲目の時計職人

盲目の時計職人

 タイトルは盲目だけど、もうめくるめくくらい面白い。
 見せ方が上手いなーとつくづく思う。最初に実際の生物の精妙な仕組みを見せる。その仕組みが作られる過程を、たとえ話と実践を交互に織り込みながらうまく解説して、あっと言わせる。おもな主張が読む人の腹に入ったところで話を抽象的な方向に持っていき、仕上げにライバル学説をひとつひとつ取り上げて論破して終わる。
 福岡伸一氏の本でもたとえ話が非常に分かりやすいと感動したけれど、生物学ってそういうもの?あるいは、説明のうまい科学者に必須の条件なのか。
 コンピュータ上で進化を再現してみるとか、生命の始まりは珪素だったかも!とか、考え始めると夜も眠れない。
 当然のようにそこらに満ちている「生き物」の仕組みが、いったいどうしてこうなったのか。疑問を持ち始めるとミミズだってオケラだってアメンボだって、驚嘆すべきメカニズムに見えてくる。生物学をやるひとはこういう目で世の中を見ているのだろうか。楽しそうだ。
 難点はボリューム。自分は図書館で借りて読んだけど、期限内に読み切れなくて2回借り直した(だったら買えってか)。

 さて、本筋とまったく関係ないところで一点。ラマルク説を論破するくだり。

 動物は何が有益で何がそうでないかを学習する。<中略>もし親がどうにかして生涯の経験をかけて得たこの知恵を自分の遺伝子に転写でき、結果としてその子供が生まれつき身代り経験のライブラリーをそなえていて、すぐさまそれに頼れるようになっていれば、そうした子供は一歩先まわりして生活をはじめることができるだろう。(p474)

 最近読んだこの本を思い出した。ただそれだけ。

おもいでエマノン (徳間デュアル文庫)

おもいでエマノン (徳間デュアル文庫)