図書館で考える道徳
- 作者: 諸橋孝一
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2001/10
- メディア: 単行本
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図書館好きな人が、図書館資料の書き込み被害について調べた本。自分で図書館に行って、開架されている資料を抜き取り調査している。
面白いのは書き込み被害の多さをNDCで分類したところ。被害が多いのは「007情報科学、070ジャーナリズム・新聞、210日本史、498衛生学・公衆衛生・予防医学、519公害・環境工学、801言語学、810日本語、910日本文学、現代日本の小説類」であり、これを貸出回転率と比較すると
すなわち、より多く被害を受ける傾向にあるのは、人気のある分野よりも、むしろ一般には不人気で専門性の強い分野なのである。
という傾向があるのだそうだ。それを踏まえて、第三章では「専門性の強い本は娯楽のためというより、レポートや調査などで『仕方なく』読む場合が多く、その苦痛が書き込みに走らせるのでは」と考察している。
図書館資料の汚損は、ここ数年で急に新聞などで取り上げられるようになった気がする。でも実際の被害の割合や、本当に最近増えているのか、どんな被害がどの分野で多いのか、具体的に調査したものはあまり見たことがない。なので、こういう視点は新鮮だった。
もちろん、調査方法や考察にケチをつけようと思えば、沢山つけられるだろう。けれども調査そのものは面白いと思う。こういう調査、誰か研究者が本腰入れてやってくれないかなあ(他力本願)。
また、図書館利用者のモラルを容赦なく批判した論調も、図書館関係の本には珍しい気がする。図書館の人が書いた本だと、サービスを提供する側として利用者を批判するようなことは書きにくいからだろう。それはそれで新鮮。