ペストからエイズまで

ペストからエイズまで―人間史における疫病

ペストからエイズまで―人間史における疫病

  • 作者: ジャックリュフィエ,ジャン=シャルルスールニア,Jacques Ruffi´e,Jean‐Charles Sournia,仲沢紀雄
  • 出版社/メーカー: 国文社
  • 発売日: 1988/06
  • メディア: 単行本
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「銃・病原菌・鉄」の、病原菌の部分だけ詳しく読んだような感じ。たまに話が専門的すぎて脳をスルーする時があったものの、意外とサクサク読めた。「銃・病原菌・鉄」で予習したお陰。
血液型による自然淘汰の話が面白い。O型の女性がAもしくはB型の子供を妊娠すると、母体に抗体ができて子供を流産しやすい。だから放っておくとO型以外の血液型は駆逐されるはずなのだが、そうはならない。なぜなら、A型・B型それぞれに特定の疫病に強いという特質があるから。Rhの血液型でも、同じような理由で色々なタイプが残るようになっている。
鎌状赤血球の遺伝子はもっと極端。この遺伝子を持つ人々はひどい貧血で、短命で死ぬ場合が多い。一見、生存のために損な遺伝子のように見えるが、実はマラリアに強いという特質がある。そのため、マラリアの多い地域では脈々と受け継がれている。血液型の性格診断より面白い。

もう一つ興味深かったのは、疫病は神の罰だという考え方が、疫病が大流行する度に広がり、しばしば患者自身を排除したり、非難する動きにつながったこと。これは別に科学が未発達な時代に限らない。現在でも、エイズに罹った人は「薬物使用」「乱れた性生活」が原因だという偏見が存在している。と言われれば、なるほどと思う。